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2025/01/09

孤影の人【その2】

《以下の文章は、成長金吾と喜三太の妄想文です。 内容はひたすら妄想ですが、金吾と喜三太の実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》

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本拠地である山城から、少し降った所、中腹の崖に皆本家の菩提寺がある。

『慈武寺』

仏の世界には似つかわしくない、厳めしい門構えをくぐり、金吾は懐かしい人に会いに来た。


「お師匠様、ご無沙汰しております。」


「おお、よう戻られた。」


金吾が顔をあげると、老僧が側の若い僧に手を貸してもらいながら、布団から体を起こそうとしていた。


「お師匠様、そのままで。」

「せっかく若が戻られたというのに、年寄りはこの体たらくじゃ、許せ。」


金吾の学問の師である慈海は、教え子の成長した姿を目尻にしわを寄せて眺めていた。
この慈海は金吾の祖父の弟にあたり、金吾にとっては大叔父になる。
昔は祖父・父の軍師として戦場を駆け回った皆本家の重鎮だが、年初めから風邪をこじらせ、寝たり起きたりの日々を

過ごしているとのことだ。
そして、側に控える若い僧は…

「兄上、お久しゅうございます。
金吾は学業を修めて帰ってまいりました。」

「相模から遠く離れた場所で、よく6年間頑張ったの。まずは無事で何よりじゃ。」

慈海の一番弟子でもある、この慈恵(じけい)は金吾の腹違いの兄に当たる。
兄弟の挨拶を眺めながら、師は目を細め、とこの中から祝いの言葉をかける

「よい若武者になりましたな。」

「はい。ありがとうございます。」

「これなら武衛殿も安心じゃろうて。」

病による息苦しさを逃すかのように一息ついた慈海は、ふと何か考える顔つきになり、こう切り出した。

「時に若、儂も考えておった。」

「はい、なんでしょう?」

「この寺の住職をお前の兄、慈恵に譲ろうかと思う。」

「えっ!?」

驚き、兄の顔を見る。
事前に師と話し合いをしていたと見え、兄に驚きはない。

「まだまだ若いつもりでおったが、ほれ、年が明けてからこの通りじゃ。
 人間、魂は自分のもの。体は神仏のものという。
 魂は死ぬまで鍛えられるが、体はいつか神仏に返さねばならんとな。
 こればかりは嫌じゃというても、人間の勝手で決められぬ。」

「…。」

「今までも事あるごとに慈恵にこまごまと教えてきたが、
 死んでからいよいよ慌てふためくのでは、儂も成仏できん。
 生きているうちに席を譲り、まだまだ足りぬところを補っていく方がいくらか安心できる。」

師のいうことはもっともだ。
高齢でいつ何があってもおかしくはない。特に体の調子が思わしくないとなれば、万が一の時に備えるのも当然だ。
それでなくとも戦でいつどんな時に死ぬか分からない時代。
何度も出陣しておきながら、ここまで生き延びたこと自体珍しいだろう。

しかし、「いつかそうなる」という知識はあっても、実感はなかった。

――教えを請える人が、いなくなる。

師がいつもいた本堂、居間、囲炉裏のそば…。
その空間に白いぼんやりした穴が開いている感じがした。
どうなるかは分からないが、はっきりと不安だけは感じる。

それを感じてか、金吾の不安をなだめるように、しかし一方、何か自分に言い聞かせるような声が続く。

「今からは若の時代になる。
 とすれば、今儂らにできることは、自分らがいなくなったときに若が頼りとできる家臣を育てることじゃ。
 多ければ多いほど良い。
 早ければ早いほど良い。」

不安にぼんやりとしたまま聞き入っていた金吾の手に、不意に大きな力が加わった。
ガサッとした感触に驚くと、大叔父の手がぎっちりと自分の手を握っている。
筋張り、日に焼け、ゆるぎない力と安心感を持った手――
握られた白くやわらかそうな自分の手が、さらに幼く頼りなく見える。
顔をあげると、左手は布団をはさんで反対側にいる兄の手を握っている。

「皆本家の強さは、血縁の強さじゃ。
 この戦国の世にあって、親兄弟が相争ったことは一度もない。
 お家の争いは外の敵に付け入るすきを与える格好の餌じゃ。
 そうならぬためにも、若は家中をまとめ、統べる力を身に付けなされ。
 慈恵は殿と若によく仕え、時には諫言も辞さぬように。
 くれぐれも、相争うでないぞ。
 争ったときが身の破滅じゃ。」

「はい。」
「はっ、はい!」

父に似た、低く落ち着いた声で返事をする兄。
はっとし、急いで返事をした、自分の高い声。


――声も覚悟も、すでに兄は違う。


>>Next

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2017/01/03 ♪忍たま小説♪ Comment(0)

孤影の人【その1】

《以下の文章は、成長金吾と喜三太の妄想文です。 内容はひたすら妄想ですが、金吾と喜三太の実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》

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「「「ご帰還、おめでとうございます」」」

大広間に腹の底に響くような野太い波が広がる。

その祝いの声を受ける上座には壮年の武将が、
その隣には、まだ少年の持影が残る若武者。

まっすぐな目の光が、外の若葉の季節に健やかに育った若木を思わせる

忍術学園を卒業した皆本家嫡男・金吾が、
本日、晴れて次期当主として、正式に家臣たちの前で紹介された。

「いや、めでたい!これで皆本家も安泰じゃ。」

我らが若殿が帰還したこともそうだが、
新緑のようなすがすがしい若さにあふれている姿に、さらに家臣たちの喜びはひとしおだ。

「皆本家の家督を継がれる日を考えると、今から楽しみじゃ。」

「その折には殿にあやかり、我が家も倅に代を譲ろうかと考えておりまする。」

「なんと気の早い!」

「そのようなことはない。これからは若の時代じゃ。
 若のお役に立てる若い者を育てることが年寄りの務めと心得ておる。
 お主も五十路過ぎたろうに。いつまでも息子を待たせず、そろそろ家督を譲ってはどうじゃ?」

「何の!まだまだ儂は現役じゃ!
 うちの青二才では心許ない!」

「何をご謙遜を。すでに家中の一員となり、立派に手柄を立てておるではないか。」

「まあまあ。
 家中の若返りは良いこと。
 これからは若い者に任せることになるじゃろう。
 儂ら年寄りは、暴走せぬよう手綱を引き締めるとするかの。」


口々に、喜びの気持ちを表している。
未来への希望にあふれる家中の中へ、主君・武衛の重厚な声が広がる。

「みなのもの。金吾じゃ。」


「学業は収めたと言っても、まだまだ若い。
 これから儂の嫡男として、皆よしなに頼むぞ。」

ははっ!と短く、はっきり答え、
家臣一同は平伏した。


============================

「おめでとう~金吾~。」

家臣へのあいさつが一通り終わり、劇中のような雰囲気から解放され自室で一息ついていた金吾に、
不意に底抜けに明るい声が降ってくる。

「ありがとう、喜三太。」

縁側からひょっこりと顔を出したのは、ずっと同室でともに学んできた喜三太。
相模に帰り、『若様』となった今でも何も変わらず接してくれる。

その気持ちを知ってから知らずか、気軽に縁側に胡坐をかき、にこにこと話を続ける。


「嬉しいな~。卒業してからも、これから毎日金吾と一緒にいられるんだもの。」

「僕も喜三太がそばにいてくれると思うと心強いよ。」

「ねえ、皆本家の家来の人たちはどうだった?
 強そう?優しそう?
 それとも学園長みたいな元気なおじいちゃんたち?」

「…う~ん…おじいちゃんではないけど、みんなおじさんかなぁ?
 ぼくをみて、とっても喜んでいたよ。」

「そうか~
 まあそりゃ~そうだよ!『若様』がやっと帰ってきたんだもん!」


まだ幼さの残る少年たちの耳に、渡り廊下に響くどっしりした足音が聞こえてきた。


「おぉ、喜三太も一緒か。」


「父上!」

「殿様!!」


当主の武衛が訪ねてきた。

金吾は即座に座敷に戻り、父に上座をすすめ、
喜三太は縁側から庭に下り、頭を下げ立ち膝で控えている。


2人の動きを見、うむ…と少し考えた等に一息ついてから、
勧められた上座の座布団の上に腰を下ろした。

すでに気の利く息子は手を打って下女を呼び、麦湯の用意を言いつけていた。

「よいよい、一通り家中へのあいさつも終わった。
 しばらくは、格式ばったお披露目もないだろうが、
 これからは、皆本家の嫡男としての教育が始まる。

 武家と言っても、剣の修行ばかりというわけにはいかなくなるぞ。
 1年ほどは、慈海(じかい)禅師のもとで帝王学を学んで参れ。
 …時期を見て、初陣の準備もせねばなるまい。」


麦湯の入った茶碗を何の気なしにさすりながら、息子たちというより、自分に言い聞かせるようにつぶやいている。
一口湯を含んだかと思えば、ふむ…と虚空に顔を向けたまま目をつむっている。
なにか考えているようだった。


そして急に縁側へ顔を向けた。

「喜三太。」

「はっ?はいっ!!」

急に自分の名を呼ばれ、びっくりした喜三太が顔をあげる。

ぱっと紅くなった額や頬には、あどけない素直さが残っている。

――これからどんな家臣になるだろうか――

  武衛にとっては、息子とともに不安でもあり、楽しみの種であった。
優秀な忍びとなってくれるのは嬉しいが、この素直さが隠れてしまうのも惜しかった。


「喜三太、お前も金吾とともに学んだ仲。
 これからは、家中の忍びとして、金吾の手足となってくれよ。」

「合点承知の助!
 僕も金吾と一緒に頑張ります!」

屈託のない声と満面の笑み。

ーーまずはこれで良い。

目線を手元の湯のみに移し、武衛は静かに残りの麦湯を飲み干した。

大人たちの思惑をよそに、木漏れ日の祝福を浴びて、ただまっすぐに光に向いて伸びている。


>>NEXT

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2016/12/12 ♪忍たま小説♪ Comment(0)

【忍たま深夜の真剣執筆60分】1/12

【忍たま深夜の真剣執筆60分】

タイトル:極楽へようこそ
種類:遊郭ネタ・くノ一
注意:ネタがないとやっぱりポエミー
室町時代に林檎があったか謎なので、明治時代くらいだと思って下さい。
ユキちゃんと照代姉さんが、遊郭で忍務中です。
#nintama_60write

ーーーーーーーー

歯を立てると身が固い
まだ甘いというより
酸っぱい

紅玉をみると
昔の私を思い出すよ

よくいるだろう?
12か13ぐらいの少女に。
周りに透明な柵はってさ
潔癖なくらいに人を寄せ付けない
透き通るような冷めた目をした子
私にだってそんな時分があったもんさ

残念だねぇ、
照代姐さんがお目当てだろうけど、
あいにくと先客があってね
新造の私じゃ見劣りするかい?
手を出すのはご法度だけど、
歌も踊りも見てくれないのかい?

ーーーーーーーー

おゼゼなんて、現世(うつしよ)の色気のない話はよしとくれ

粋な旦那はツケとくもんだよ。

ーーーーーーーー
姐さんの身受け話?
ありゃあ、立ち消えしたねぇ
相手の旦那が破産してさ、

まあその前も立ち消えしたけどねぇ
お大名の気楽な三男だったのに、もったいない
お取り潰しなんて、気の毒なもんだ。

そんな話ばっかりだよ、姐さんには
それでついたあだ名は、地獄太夫

まあ、あんなきれいな閻魔様に導かれるなら、地獄の道行も夢のようだろうさ

ーーーーーーーー
なんだい?
もう酔ったのかい?
目の前ふわふわ、ぐるぐるまわる
色とりどり、きれいな極楽ってかい
そりゃあいいね

ここはこの世の浄土さ、
赤い提灯、きれいな三味の音、女の流し目
門をくぐれば現世とは別の世界
全部忘れて泡の世界

ーーー泡が割れたら
どうなるんだろうねぇーーー

そのまま そのまま…

さあ、極楽へようこそ

ーーーーーーーー

「照代姐さん、また馴染み客に不幸が遭ったってねぇ」
「まあねぇ、それが地獄太夫ってもんさ。夢うつつのまま極楽行きなんて、幸せなもんだろ。

…お疲れ様、ユキちゃん。」

ーーーーーーーー

飴をかければ林檎飴
艶々して
初めは甘い思いをさせてあげる

実が食べたきゃ
飴を全部食べ尽くして

酸っぱいのは気のせいよ
舌が甘みで麻痺してるから
酸味が強く感じるだけ

幸せな気分のまま
身も心も崩される
罪の果実

覚悟ができたら
召し上がれ

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2016/01/13 忍たま深夜の真剣執筆60分 Comment(0)

紅葉の宿【番外編】

兵太夫小説…長かった!!
結局1年以上かかってました…。
あまりにも忍たまの世界観から遠ざかってしまったので、
ギャグ風味のものを…。

以下、「紅葉の宿」の番外編です。

=============================

空気がゆがんでいる…。

いや正確には、この息詰まるような雰囲気が、
目に見えない空気まで飴のようにぐにゃりとゆがめている。


仙蔵「さて…今回は私が指揮をとらせてもらう…。」

長屋の一室には、最上級生である六年生が全員集まり、
硬い表情で一枚の地図を囲んでいる。

次の実習は、ある城の支援だった。
中立的な忍術学園の立場では、基本的によっぽど「利益」や「理(ことわり)」がないかぎり、あまり深入

りしない。
かといって「縁」があるところも無視するわけにはいかない。
少しの「縁」があるため、本陣の後方支援をすることとなった。

これが今回の実習の概要だ。


仙蔵「言っておくが、忍務では判断を誤ると命を落とす。
   …事情はうすうす気づいていると思うが…私情は挟まず、意見を述べてほしい。」

文次郎「野戦では、数がものを言う。
    このたびの戦、打って出たら負けるだろう。」

小平太「支城の方はどう出る気なんだ?」

長次「基本的に有事の際には、本隊の応援が来るまで持ちこたえるつもりのようだ。
   大方の予想では、このままいけば持ちこたえられそうに思えるが…。
   相手が悪い。」

留三郎「万が一の時もある、ということだな…。」

伊作「ねぇ…この支城の方にも応援を送ることはできないのかな…?」

仙蔵「伊作、私情は挟むなと言ったはずだ。
   同情はしても、利のない行動はするな。」


「…。」


分かっていても、
どうしても感情が付いてこない。
とはいえ…。

仙蔵「まずは自分たちの身の安全と、忍術学園の後輩たちまで巻き込まないことが最優先事項だ。
   気の毒だとは思うが、私たちにも守るものがある。
   見ず知らずの者を助けた代わりに、無関係な身近な者たちを危険にさらすことはできん。」

伊作「分かった…ごめん。」

仙蔵「今、五年生が偵察に行っている。
   本当に総攻撃など、動きがあれば連絡があるはずだ。」






ピーーーーーー!!!!!





文次郎「うん?笛の音か!?
    今ピーっと…。」


六人の間に緊張が走る。
全身を耳にして、次の音を待つ…。






「燃料をいれてくださぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!」





仙蔵「やかましいわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


留三郎「いったい何の声だ??」


思わず部屋から飛び出す六人。
すると…



三治郎「燃料切れのお知らせです
兵太夫「ごめんなさ~いvv



からくりコンビの2人が、いい笑顔でからくり人形を支えている。
どうやら、また何か作って実験しているようだ。



三治郎「どうも音量を間違えちゃったようで~v」

兵太夫「しかもなぜか1分に1回ぐらい『燃料を入れてください』っていうんですよ~。
    ちゃんと燃料入っているのにさ~。
    プログラム間違ったかな?」



仙蔵「やかましい!!人が真面目な話してるときに、そんなもん持ってうろうろするな!!!」



兵太夫・三治郎「「は~~~~い」」


当のからくりコンビは、反省しているのしていないのか…
きゃっきゃと笑い合いながら、ロボットを台車に乗せて走り去っていく。

その後ろ姿を見て、仙蔵は額に手を当てた。

仙蔵「はぁ…まったくあいつらは…
   人の気も知らないで…。」

伊作「いいじゃない。それだけ何も知らないってことだよ…。」

長次「…変に耳に入れる前に、さっさと話をまとめてしまおう。」

小平太「そうだな!男六人、こんな辛気臭い顔して話し合ってるのも気詰まりだ!
    さっさと実習やって、気がかりな事は終わらせよう!」

仙蔵「そうだな…。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

額を突き合わせながら、議論が進んでいる。

長次「…そろそろ、五年生が帰ってくるころだな…。」

仙蔵「うむ。この時間なら予定通りだ。
   異常なし、状況報告のみ、ということになるかな…。」



ドドドドドドドド


文次郎「なんだ?何か近づいてくるぞ!?」
小平太「なんか暴走してるみたいだな??」



ピーーーーーー!!!!!



「燃料をいれてくださぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!」



長屋の壁を突き破って突進してきたのは、
暴走したからくりコンビのロボット。
どうやら自走式にしたら、さらに失敗したらしい。



仙蔵「や・か・ま・し・いわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!」




仙蔵
怒りのあまり
焙烙火矢装備。


留三郎「やべぇ!仙蔵が怒髪天を突いたぞーーー!!」

文次郎「全員退避ーーーーー!!!!!!」


伊作・長次・小平太「「「 了解!!! 」」」




*END*

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2015/12/15 ♪忍たま小説♪ Comment(0)

紅葉の宿【その14】

内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。

中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》

=============================================



「大殿様…あれでよろしかったので?」


兵太夫が帰った日、萩乃は最後のあいさつを述べにきていた。
くぼんだ目が萩乃に向けられる。


「あれ以上何か言えば、判断も鈍るだろう…お互いにな。
 
 あれには、うっかり武家に生まれたために面倒をかけた。
 武将は武から離れて生きることなどできん。
 仮に武を厭って暮らしたとしても、どこか魚の小骨のように引っかかって取れないものだ。
 そこで迷わせてはならん。

 …あれには何よりも大切なものを渡した。
 もし道に迷った時でも、自棄にならんよう、心の支えになるだろう。」


話すたびに、ぜろぜろと喉の奥がなり
ひゅーひゅーと音がする。


「儂にはもう、あれの力になることは出来ぬ。
 この城、この国の主であるために、父らしいこともできなかった。
 儂が死んだら、あれは我が家との関わりはなくなるだろう。
 それでも生きれるよう…一人にならぬよう…。頼む。」


「ご心配なさいますな。
 兵太夫様はもう一人前です、どこへでも行きたいところへ行き、どこでも生きられるでしょう。
 萩乃はしばらく…兵太夫様の帰る場所をお守りするのみでございます。

 兵太夫様が、一緒に歩んでくれる方たちとともに出立するまで…留守番をいたします。」


萩乃は、満月のような丸い顔で微笑んだ。
その満月には、ふと寂しさを感じるような、穏やかな光がにじんでいた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(6年前に、私は容赦なく手打ちにされましたな…。)


――6年前、

萩乃が兵太夫を忍術学園に入学させることに反対し、
父親である大殿相手に、手打ち覚悟と啖呵を切った時のこと、


バスッ


「っつ…!!」


首にしびれるような痛みが走った。
思わず手で押さえると、首はつながっている。

はっと目をあげると、
目の前の大男の手には真っ二つに折れた扇が握られている。


「痛かろう。これでお前の首は落ちた。死んだも同然じゃ。
 しかし、お前の主人と共にあの世へ行くことは許さぬ。
 その魂は、いったん首を切った儂が預かる。儂が良いというまで成仏はならぬ。

 お主は、これからは兵太夫に仕えよ。
 手始めに、あれの魂が、この世に心残りさせるようなものは取り除いておけ。
 …これは並大抵のことではないぞ。あの世も地獄も恋しくなるかもしれん。
 だが、儂は許さぬ。

 …すでに一度死んだ身じゃ。何事にも耐えねばならん。」


痛む首元を押さえながら、一つ一つの言葉を反芻していると、
落ち着いた思考が戻ってきた。


(…そうだ…御方様が一番気にかけておられることは、後に残される兵太夫様のお立場だ…。
 母がおられる今でさえ、微妙なお立場なのに…。)


痛みで頭が冷やされ、昇りすぎていた血が引いていく。


「分家させて領地を与えることもできぬわけではない。
 しかし、家督は継がぬと決まっていても、石高をやったらどうなる?
 兵太夫にその気はなくとも、担ぎ上げて家を分断させるような輩が出ないとも限るまい。
 ましてや、あの子の分別が付くまで、儂も生きているとは言えん。

 …兄の太郎は儂に似ている。
 国や城を守るためなら、何を犠牲にしてでもやるべきことはやる。
 家臣と領地を守るものは、どこまでも非情にならねばならん。

 武家に生きるというのは、そういうことじゃ。
 生きることも…死ぬことさえも自分ではままならなくなる。」


「…。」


「それに、これからは武力の時代ではない。
 商人や交易の時代がくる。
 幸い兵太夫は武以外の才能にも恵まれたようだ。
 むざむざ過去のものになりつつある武家の意地のために…
 生かせる者の命を縮めることはあるまい。」


――――。

(私は、目の前のことに躍起になりすぎていたんでしょうな…。
 今思えば、あの時の判断は正しかったのかもしれない…。)

しかし、まだ自分には守るべきものがある。
それを果たすまでは…。

(まだまだおそばには行けませぬな、御方様…。)


西の夕日が弱まるのと引き換えに、
東から昇り始めた月が、光り始めていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

――――。



1人きりになった病室で、父は思い出していた。
日はもうすでに沈み、雪国特有の静かな闇が部屋に満ちてきている。


――7年前の冬の日、

目の前には自分の愛妾がいる。
人払いをした部屋は、ただ病人の呼吸音だけが響いている。

(もう長くはない…。)

いよいよ病状は悪化しているようで、頬はこけ、目の下には隈ができている。


「なぜ今まで黙っておった。」


戦続きの自分に余計な気を遣わせたくないと、知らせなかったのだろう。
とはいえ、どうしてこうなるまで自分も気づかなかったのであろうか…。

しかし、目の前の佳人はその問いには答えない。お願いがございます…。と消え入るような声で答える。

もう話を聞く余裕も、ないのかもしれない。


「…兵太夫を、外で養育なさってください。」


「他家にやれというのか?」


驚いて返す。
確かに、母がなくなれば今よりも立場は悪くなる。
しかし他家に養子にやるとしても、後ろ盾のない立場ではすぐに見捨てられ、殺されてしまう。
なぜ余所にやるのか?その意図が分からなかった。


「いいえ、武家以外で知識を学べるところでの養育をお願いしたいのです。
 あの子には武芸より知識を付けさえてください。

 …確かに、あの子は武家の子です。
 しかし、これからは武の力の時代ではなくなると思います。
 人々は大平の世を望んでいますから…もう戦乱の世は終わると思っております。

 私は…あの子に少しでも長く生きてほしい。
 それには、平和な世を生きる知恵が必要かと…。

 だから、外で養育をと…。」


「何を言う。外に出さずとも、儂が立派に育てあげ…」


そう言いかけてふと言葉に詰まった。


――自分はいつまで生きられるのだろうか…?


何歳までお前は生きるのだ?と問われて正確に答えられる人間などいるはずはない。
しかし、兵太夫が成人するまで、高齢の自分が元気で生きている未来だけは見えなかった。


――父として見てやる時間は、自分にはないのだ。


「しかし、兵太夫本人は…どう思うであろう…。
 今でさえ、周りを憚ってあまり可愛がれておらぬのに…。

 …子を手放した父として、あの子に儂を恨ませる気か…。」

「他の3人の皆様も、恨まれる覚悟でお育てしたのでしょう…?」


上の兄3人が育つ頃には、まだ自分には時間があった。

戦場で無念のうちに死なぬよう、
駆け引きに飲まれて食われぬよう、
武芸も学問も、それは厳しく叩き込んだ。

もちろんそれぞれの息子たちに反発もされた。

長男はしばらく口をきいてくれなかった時期があった。
次男は武芸の練習は嫌だと、部屋の柱にしがみついて泣きじゃくり部屋から出ようとしなかった。
三男に至っては「父上なんか嫌いだー!」と叫んで脱走。城の外まで逃げ出したこともあり、一番手を焼い

た。

全身でぶつかりながらも、自らの手で息子たちを育てていた日々は、今思い返せば懐かしい。


しかし、そんな日々は兵太夫にはやってこない。


「分かった…妥当なところを探してみよう…。」

「…ありがとうございます…。」


そういって安心したかのように、愛妾は胸の前で手を合わせ目を閉じた。
このまま死んでしまうのではないかと、ひやりとしたが、
静かに聞こえてきた読経に、一瞬だけでも心が落ち着いた。


――自分はこの女性に何をしてやれただろうか――

白い顔を見ながら、そんな考えに耽っていた。


――――。


6年ぶりに会った末の息子

すらりと背が伸び、色白の瓜実顔に涼やかな目元が思い出される。


―――儂には似とらんの…。


6年前に別れた時の、幼い顔に表情のない目。
愛妾の最後の姿と共に、今までずっと心に残っていた。
それが、先ほどまでここにいた。


―――これから、どんな人間になるのだろうか?


それを見ることは叶わない。


その年の暮れ。
吹雪の日に父は身罷った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今年も山々が色づく季節が巡ってきた。
苛立たせるような、むせかえる暑さはすっかり過ぎ、済んだ空気と高い空が頭上に広がっている。

紅く色づいた葉を、いくつもくぐっていくと、
大きな紅葉の木と質素な家が見える。
6年間、何も変わらない。


来客に気づいた老女が、
満月のような顔に笑みを浮かべて小走りに駆け寄ってくる。


兵太夫は今年も帰ってきた。


紅葉の宿へ


*END*

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2015/12/13 ♪忍たま小説♪ Comment(0)

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