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《以下の文章は、成長金吾と喜三太の妄想文です。 内容はひたすら妄想ですが、金吾と喜三太の実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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本拠地である山城から、少し降った所、中腹の崖に皆本家の菩提寺がある。
『慈武寺』
仏の世界には似つかわしくない、厳めしい門構えをくぐり、金吾は懐かしい人に会いに来た。
「お師匠様、ご無沙汰しております。」
「おお、よう戻られた。」
金吾が顔をあげると、老僧が側の若い僧に手を貸してもらいながら、布団から体を起こそうとしていた。
「お師匠様、そのままで。」
「せっかく若が戻られたというのに、年寄りはこの体たらくじゃ、許せ。」
金吾の学問の師である慈海は、教え子の成長した姿を目尻にしわを寄せて眺めていた。
この慈海は金吾の祖父の弟にあたり、金吾にとっては大叔父になる。
昔は祖父・父の軍師として戦場を駆け回った皆本家の重鎮だが、年初めから風邪をこじらせ、寝たり起きたりの日々を
過ごしているとのことだ。
そして、側に控える若い僧は…
「兄上、お久しゅうございます。
金吾は学業を修めて帰ってまいりました。」
「相模から遠く離れた場所で、よく6年間頑張ったの。まずは無事で何よりじゃ。」
慈海の一番弟子でもある、この慈恵(じけい)は金吾の腹違いの兄に当たる。
兄弟の挨拶を眺めながら、師は目を細め、とこの中から祝いの言葉をかける
「よい若武者になりましたな。」
「はい。ありがとうございます。」
「これなら武衛殿も安心じゃろうて。」
病による息苦しさを逃すかのように一息ついた慈海は、ふと何か考える顔つきになり、こう切り出した。
「時に若、儂も考えておった。」
「はい、なんでしょう?」
「この寺の住職をお前の兄、慈恵に譲ろうかと思う。」
「えっ!?」
驚き、兄の顔を見る。
事前に師と話し合いをしていたと見え、兄に驚きはない。
「まだまだ若いつもりでおったが、ほれ、年が明けてからこの通りじゃ。
人間、魂は自分のもの。体は神仏のものという。
魂は死ぬまで鍛えられるが、体はいつか神仏に返さねばならんとな。
こればかりは嫌じゃというても、人間の勝手で決められぬ。」
「…。」
「今までも事あるごとに慈恵にこまごまと教えてきたが、
死んでからいよいよ慌てふためくのでは、儂も成仏できん。
生きているうちに席を譲り、まだまだ足りぬところを補っていく方がいくらか安心できる。」
師のいうことはもっともだ。
高齢でいつ何があってもおかしくはない。特に体の調子が思わしくないとなれば、万が一の時に備えるのも当然だ。
それでなくとも戦でいつどんな時に死ぬか分からない時代。
何度も出陣しておきながら、ここまで生き延びたこと自体珍しいだろう。
しかし、「いつかそうなる」という知識はあっても、実感はなかった。
――教えを請える人が、いなくなる。
師がいつもいた本堂、居間、囲炉裏のそば…。
その空間に白いぼんやりした穴が開いている感じがした。
どうなるかは分からないが、はっきりと不安だけは感じる。
それを感じてか、金吾の不安をなだめるように、しかし一方、何か自分に言い聞かせるような声が続く。
「今からは若の時代になる。
とすれば、今儂らにできることは、自分らがいなくなったときに若が頼りとできる家臣を育てることじゃ。
多ければ多いほど良い。
早ければ早いほど良い。」
不安にぼんやりとしたまま聞き入っていた金吾の手に、不意に大きな力が加わった。
ガサッとした感触に驚くと、大叔父の手がぎっちりと自分の手を握っている。
筋張り、日に焼け、ゆるぎない力と安心感を持った手――
握られた白くやわらかそうな自分の手が、さらに幼く頼りなく見える。
顔をあげると、左手は布団をはさんで反対側にいる兄の手を握っている。
「皆本家の強さは、血縁の強さじゃ。
この戦国の世にあって、親兄弟が相争ったことは一度もない。
お家の争いは外の敵に付け入るすきを与える格好の餌じゃ。
そうならぬためにも、若は家中をまとめ、統べる力を身に付けなされ。
慈恵は殿と若によく仕え、時には諫言も辞さぬように。
くれぐれも、相争うでないぞ。
争ったときが身の破滅じゃ。」
「はい。」
「はっ、はい!」
父に似た、低く落ち着いた声で返事をする兄。
はっとし、急いで返事をした、自分の高い声。
――声も覚悟も、すでに兄は違う。
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