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- Newer : 紅葉の宿【その10】
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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。 内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。 そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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夕方、
ヒグラシの声を聴きながら、兵太夫は昼間のいたずらのお返しを考えていた。
――とはいえ、どうやってお返ししたもんだろう…?
落とし穴はもう自分が引っかかっている
地味なものより派手なものがいい
びっくりはさせたいけど、ひどいことはしたくない
――そうだ。
昔の好奇心がむくむくとわいてきた。
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「なにやってんの~~?」
「えっ?」
急に降ってきた声に顔を上げると、そこには同室の三治朗の顔があった。
(全然気づかなかった…。)
どうやら図面を書いているうちに、熱中しすぎてしまったようだ。
「兵太夫、これなーに?何かの図面?」
「…うん、」
「すごい!僕もこういうの好き!
ねえ!これどんな機械なの?」
三治郎は目をキラキラさせて聞いてくる。
ここの仕組みはどうなっているのか、この工夫はすごいとか、ここはこのままじゃ動かないんじゃないの?などなど。褒め言葉やら、アドバイスやら、様々な言葉が飛んでくる。
細かいところまで見ているというのは、それだけ興味があるということだ。
(ほんとに好きなんだな…。)
「面白いねー兵太夫、こんなの作れるんだー!」
無邪気に感心したり、難しい顔をして考え込んだり…そんなころころ変わる三治郎の顔を何とはなしに見ていると、
驚くほどすんなりと言えた。
「三治郎…あのさ…
…一緒に作ってくれる…?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
協力者を得たとはいえ、作れるものは一つ。
というわけで、試しに小さな模型を作ってみることにした。
まずは材料調達と忍術学園を回っていたところ、用具委員の食満先輩に声をかけられた。この先輩は怖い人なのかと思っていたが、案外下級生の面倒を見るのが好きなようで、
「なんだ?モノづくりに興味があるのか?よーし、ここにあるやつなら何でも持って行っていいぞ!」と言ってくれた。
しかも、『皆で食え!』とお菓子までくれ、頭をなでなでされた。
――なんかちょっと意外だったなぁ。
拍子抜けしたというか、ほわほわしたような不思議な気分になりつつ、図面に沿って三治郎と一緒に作っていく。
時々、撫でられた頭がくすぐったいような気がして、自然と顔が笑ってしまいそうだった。
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「ずいぶん面白いものだな。自分で作ったのか?」
試作品をいじる手元から目をあげると、そこには優しい笑顔を浮かべた先生が立っていた。
「土井先生!」
「どれどれ~先生にもよく見せてくれ~…
なるほど…よく考えたものだな…。」
試作品を受け取った先生は、ひっくり返したり、あちこち角度を変え、じっくりとみている。
「すごいな!兵太夫はからくりの才能があるぞ!
いやー、1年は組にこんな天才がいたとは!」
まるで自分のことのように喜んでくれている。
その喜びようを見ているのがどこか辛かった。
「兵太夫は将来有望だな!
これで教科も実技もできたら、何も言うことなしだ!」
期待してるぞとでもいうように、わしわしと頭を撫でる。
ただ、その優しい声の隙間から、昔聞いた大人たちの声がよみがえってくる。
――しかし惜しいのう…賢かろうと、からくりいじりでは…
――せめて武芸に秀でてくれれば、お家の中でも立場が上がろうに…
――どう出来が良くても人質に出されるのが常だろう。
(そうだ…どれだけ頑張っても…勉強しても…
僕の力は誰にも求められていないんだ…。)
忘れかけていた、ぽっかりとした穴から、
ぽつりと声が出た。
「でも、先生…。
武家ではこんなからくり、役に立ちません。」
頭をなでる手が止まり、離れた。
次の瞬間、ぽんっと両肩に温かい手が力強く降りてきた。
びっくりして顔をあげると…
自分と同じ目線に、土井先生の目があった。
「兵太夫、いいか?
兵太夫の才能は兵太夫だけにしかないものだ。
いわば、一生の財産さ。それをどういう風に役立てるかは、自分次第だ。
役にたてられないと最初から決めつけるもんじゃない。
…確かに、武家には武力が一番求められるだろうが、ここではそうじゃない。何でも使うのが忍者だ。
何でもやったもの勝ち。役立てたもの勝ち。それが物でも才能でもな。
一番やっちゃいけないのは、やる前から『どうせなんのためにもならない』とあきらめることだ。」
それに、先生は兵太夫のからくりをもっと見たい―――
「僕のからくりを…見たい…?」
「あぁ!」
目の前の笑顔に、裏はない。
目線はずっと同じままだ。
しゃがみこんで、小さい自分の方に手を置いて、同じ高さで見てくれている。
―――今まで、大人たちはこうして僕をまっすぐ見てくれただろうか?
ずっと周りの大人たちの目線に届こうと背伸びしていた気がする。
感心しながらも、期待しない家臣たち。
そして、たまに来る父。
その目線の高さに、視界に、入り込もうと必死になっていた。
ならざるを得なかった。
―――もういいんだ。
そう思ったとき、ふーっと息が抜けていく気がした。
ここではもう「絶対出来なきゃいけない」なんてことはない。
「これをやっちゃ変な目でみられる」こともない。
なにより、枠から外れることに怯えなくてもいい。
―――これが「安心」することだと気づいたのは、もっと後だった。
そんな兵太夫の顔をみながら、土井先生はちょっとした忠告をした。
「忍者の学校だからな。仕掛けやからくりはそこらじゅうにある。
見抜いてなんぼだ。大怪我させない程度ならいくらでも作っていい。
でも、ほどほどにしておいてくれよな。」
その後、忍術学園のあちこちにからくりが増えた。
兵太夫に最初にいたずらを仕掛けた主は、今では同室者とともに、恰好の試験体になったのは言うまでもない。
そんな時に、嫌な思いをする事件が起きた。
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