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- Newer : 紅葉の宿【その12】
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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。 内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。 そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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身支度を終え、目的の人を探す。
目はまだ赤いが、冷やしたのでなんとか見れる程度になった。
探す人はいつもはどこにいるか分からないのに、今日は案外、簡単に見つかった。
昨日の縁側にその人はいた。
「学園長先生!」
「ん?兵太夫か、今日は早いのう。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「なるほど…。
家族ともつながっていたいし、みんなとも仲良くしたい…か。」
「はい…。」
「まあまあ、焦ってみても結論なんか出てきやせん。
そもそも、昨日今日で変わるもんではない。儂からあれこれ言われて『はい、そうですか。』なんて簡単に言える奴だったら、そもそも自分の考えなんぞあってないようなもんじゃ。
悩むだけ、兵太夫はしっかり自分の考えを持っていたということじゃよ。
良いことじゃ。自信を持って良い。」
「…はい。」
「考えが変わるというのは、いろんなものを見て聞いて、ゆっくり変わるもんじゃ。
頭でわかるというものではないからの。
大人になっていくうちに、だんだん自然に変わっていくものじゃよ。
むしろ10代20代の頃なんぞフラフラしてるのが当たり前じゃ。兵太夫の歳だと、まだまだ悩む時間は長いぞ?
儂も、ある程度まんべんなく世の中を見ることができるようになったのは、三十路半ばも過ぎてから…むしろそこまで歳をとらんと分からんこともあったと思っておる。
今だってそうじゃ。歳をとればとるほど世の中わかってきて、面白くなる。
そう思うと、これから歳をとるのも楽しみになってくるのう。」
70を過ぎたというのに、10歳の自分と少しも変わらないいたずらっぽそうな笑い顔。
まだまだこの人の人生は楽しそうな気がして、羨ましい。
かと思えば、急に考え込む顔つきになり、顎に手を当て、ふーむ…と少し唸ってからこう続けた。
「それに兵太夫の場合、ここに来た以上、必ずしも武士になるというわけではないのだから、いろんなものを見て、自分に向いている道を選ぶというのも必要ではないかな?
ここにいるときにだけでも、武士のことはいったん忘れてみたらどうじゃ?」
意外な提案に少し驚いた。
「武士」がなくなったら、自分はどうしたらいいんだろう?
全くの白紙になんでも描いていいよと言われるぐらい、何をしたらいいのか分からなくなる。
「…僕、今まで将来は武士になるとしか思っていなかったのに、
急に自分に向いているもの選べって言われても分からないです。」
ぽつりと言った言葉に、豪快な笑いが帰ってきた。
「そりゃあそうじゃ!誰が自分でも最初から『これだ!』とわかるもんか!
人間なんざ、この世にたくさんおるからの。神様仏様でも、いちいち誰に何の才能を授けたかなんて覚えておられるかどうか…分からんじゃろう!
まずは、なんでもやってみい。
やってみなければ、自分が何を好きなのか、得意なのか、分かるもんか。
ここでは、誰もそんなものやるなとも言わんし、他の生徒もからかったりせん。
むしろここにいったんとどまって、ぼーっと自分のことを考える時間を過ごすことが今は必要なんじゃよ。
とはいえ、まあ…宿題をさぼるのはなしじゃがな。」
やれやれ…と学園長は縁側から庭へ下り、腰を伸ばした。
そして、ある木の枝を指さした。
「ほれ見てみなさい。あそこにミノムシがあるじゃろう?
ミノムシはああやってお宿を作ってな、中でさなぎになって冬を越して、それから脱皮して成虫になるんじゃよ。
可笑しいと思わんか?
ああやっている間は、動くこともできんし、脱皮した直後は体が出来上がっていないから逃げられもせん。
何もあんな面倒なことせんと、毎日少しずつ成長してれば何の苦労もいらんのにな?
だが、なぜか生き物はそうなっている。一時、お宿にこもって自分が変わっていくのを待つしかない時があるんじゃよ。
ミノムシは季節が来たらその時が嫌でも来るが、人間はそうはいかん。
いつその時なのか、いつまでこもっているのか、本当にこうしていれば大人になれるのか。
誰にも分からんのじゃよ。
それが出来るのは全部自分次第じゃ。」
「…もし…もし、お宿にこもっても、なんにも分からなかったときは、そのまま出られないんですか…?
ずっと青虫のままだったら…どうしたらいいんですか?」
急に、暗いミノの中で一生過ごす光景が名に浮かび、怖くなった。
自分がそうならない補償も、そうなってしまう可能性も、今は何も見えないのだ。
そんな不安を払拭するかのように、
やはり人生すべてが楽しみであるかのような笑い声で、
元・天才忍者は応えてくれた。
「青虫がさなぎになるように、自然とじっくり考える時が、いつかくるもんじゃ。
その時に、自分は何をなすべきか、やっと考えられるんじゃよ。
大事なのは、自分で勝手に意固地になってこもらないことじゃ。
そうなると他人は誰も助けようがないからの。
今はたくさんのことを知って、まんべんなく判断できる目を養うことじゃ。
そして良い友をたくさん持っておれば、何も心配することはない。」
(――僕にはいるんだろうか…?)
そんな不安がよぎったとき、見透かしたように学園長が振り返った。
「現に、一人で泣いているのを心配してくれる友がおるじゃろう?
謝ってまた仲良くしたいと思う友もいるじゃろう?
…もうそろそろ帰ってくるのではないかな?」
はっとした。
もう日が完全に上っている。
素早く学園長に一礼し、門のところまで、たまらず駆けて行った。
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「うわーーーーーーーーーーー!!!!!」
「どわぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!」
「誰だーーー!こんなところにからくり仕掛けた奴はーーー!!!」
「…胃が…胃が痛い…。」
相変わらず賑やかな忍術学園。
それに今年はからくり被害者の悲鳴が加わった。
「まーた、あのからくりコンビですか…。よう次々と作るもんですな。」
「まあまあ、山田先生。そういわずに。
儂は毎日がますます面白くなったわい。」
目を細めて楽しんでいる学園長の横で、は組の実技担当の山田先生が、困ったように顎を撫でている。
「まあ、最近じゃちょっとやりすぎなんじゃあないかって時も有りますがね…。
わたしゃ、土井先生の胃が心配ですよ。」
「はっはっはつ!
『からくりをもっと見たい』と言ってしまった手前、辞めろとも言えんからな!
まあ、儂としては、兵太夫にはからくりを作り続けてほしいのう。
…あれには才能と長い年月が必要じゃ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
草木が一斉に芽吹く日々、
むせかえる緑と陽射し、
照り付ける長い夕日
静まりかえった雪の日
その光景が何度か廻った。
卒業を間近に控えた雪の日、手紙が届いた。
実家から初めて届く手紙。
それは、父の病状を知らせる手紙であった。
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