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- Newer : 紅葉の宿【その13】
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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。
内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでくだ
さい。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視し
ております。訴えないで☆》
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6年ぶりに城に着いた。
―――『父』とはどんなものだったろう…?
記憶にあるのは、幼い日に「他所で学べ」と申し渡した時の父の姿。
大柄で怖い顔をして…
岩のように冷たい。
(今、どんな姿だろうか?)
記憶をたどっていると、側付の小姓が迎えに来た。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「兵太夫か。」
6年ぶりに最初に会った肉親は一番上の兄だった。
この6年のうちに、城の中も人も変わっていた。
まず兵太夫が12歳の時、
すぐ上の兄が戦で討ち死にした。
唯一の弟である自分には、渋柿を食わせたり、小脇に抱えて馬に乗ったりなど、
いたずらばかりしてはかわいがってくれた、一番親しい兄。
その兄は、引き上げの際に長兄を逃がすため、殿(しんがり)を引き受けたのだという。
人の話では、出陣前に湯づけをかき込み、箸を投げ出し、
「これであの世まで腹はすかぬ!十分じゃ!」と言い、敵に切り込んでいった。
一本気で男気ある兄らしい最期だったと聞いた。
二番目の兄も、その次の年に討ち死にした。
いたずらに泣かされ、良く泣きついては、慰めてくれた優しい兄だった。
そんな優しい次兄らしく、女子供はその前に長兄の城へ避難させ、
本隊が来るまで持ちこたえるのが我らの役目、とそのまま籠城した。
思わぬ長期戦となり、さらに水を止められ、もはやこれまでと決断したのだろう。
骨も残さず、自身の城と共に消えた。
萩乃から都度都度聞かされてはいたが、
もう自分の兄弟は、この歳の離れた長兄しかいないのだと思うと、
心臓あたりにふっと木枯らしが吹きこむような感じがした。
長兄は相変わらず無口なようで、必要以上の説明はせず、
父の居間へ連れて行く。
その、父に似た肉付きのいい背中や、日に焼けた太い首を見ながら、
ぼんやりと自分とは似ていないなと感じていた。
自分は、背は高いが細身だった。
どちらかというと、労咳で亡くなった母に似たのだろう。
真夏にいくら日にあたっても、冬には白い肌に戻っていた。
廊下を進む途中、えいっ!やぁっ!と元気な子供の声が聞こえてきた。
声のする方を見ると、久々に日差しがのぞいた中庭で、剣術のけいこをしている2人の男児がいる。
「儂の息子たちだ。上の太郎が9つ、下の次郎は3つになる。」
「そう…ですか…。」
(もうこんなに大きくなったのか…。)
話に聞いてはいたが、甥と顔を合わせるのは初めてだ。
兄はもうすでに三十路を過ぎている。
この歳にしては子供が少ない方だろう。
まだ15歳の自分にとっては、甥というより弟と言った方が身近に感じる存在だ。
そう思って見ていると、自分たちの視線に気づいたのだろう、
兄の方がこちらをみて会釈をした。
弟の方は「ちちうえー!!」と無邪気に紅葉のような手を振っている。
(仲のよさそうな兄弟だ…。)
思わずにっこり笑って手を振りかえしていると、
兄が先に歩き出した。
慌てて追うと、
その背中がポツリと声をこぼした。
「兵太夫、儂は3つの子供に切腹の作法を教えることになったぞ…。」
「えっ…?」
「人質にな…次郎を行かせることになった。」
前を行く兄の背中が
このときだけ、少し丸まって見えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(…これが父だろうか…。)
父の居間で一通り挨拶を口上終え、顔をあげた時、
そこには、
小さな老人がいた。
『父』だと理解するのに、数秒かかった。
同じ労咳とはいえ、記憶にある母の儚い美しさとは違い、立ち枯れた木のようだ。
だが土気色の顔をしていても、床にはつかず、脇息に上半身をもたれかけていた。
(そういえば…父上が横になっている姿は見たことがない…。)
「兵太夫か…。」
普通の親子ならば、ここで「大きくなったな」「見違えるようだ」など、子の成長を褒めるものだ。
(でも、この父からそんな言葉な無いだろう…。)
生まれて15年、親子の縁が薄かった分、
期待もしなくなっていた。
「兵太夫…。」
「はい。」
しかし、名前を呼ばれ、次に言われたのは意外な言葉だった。
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