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2025/01/09

紅葉の宿【その10】

《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。 内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。 そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》

=============================================


きっかけは、何の気なしに言ってしまった言葉だった。

「乱太郎のお父上、捕まったのに、生きて何度も帰るのか」

「だって、密書を奪うことが目的だもん。
 できなくとも、何かしらの情報を伝えるのが父ちゃんの仕事だもの。」

正直、悪気はない。
むしろ知らなかったから、疑問のままに口にしてしまったと言えるだろう。

それが悪かった。

「うちの父ちゃんは忍者なの。武士と違って負けたから切腹したってなんの意味もないよ。
 死ぬより何が何でも生きて帰ってくる方が、マシだよ。」

きょとんとした顔の兵太夫に、むっとした表情でそれだけ言い捨てて、去ってしまった。
ちゃんと理解はできなくとも、悪いことをしてしまったことだけはわかる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日の短くなった縁側で、膝を抱えてごろんと寝っころがる。
しかし、いくら転がったところで、もやもやした煙のような気分は晴れない。

(乱太郎、何に怒ってたんだろう…。)

何も浮かんでこない。このままじゃまずいのはなんとなく分かっているが、どうしたらいいのか分からない。
反省する気持ちはあるが、まず、なにに対して怒らせてしまったのか…。
もやもやとした煙の中にいくら目を凝らしても、目に染みて痛いだけで、見えるものはない。

「なんじゃ、先客がおったのか。」
「? 学園長先生?」

慌てて目をこすって起き上がってみると、お茶とせんべいの盆を持った学園長がいた。

「まあいい、勝手に隣に座らせてもらうぞ。」
「はぁ…。」
「ほれ、たくさんあるから兵太夫も食べなさい。」
「…はい、いただきます…。」

拍子抜けして、勧められるままにせんべいをかじる。

ぼりぼりぼり…。

ほぼ1枚、大人しくせんべいをかじったところで、学園長が話しかけた。

「うむ、食べたな。」
「?? はい。」
「それじゃあ、兵太夫も共犯者じゃ!」
「はぁっ!?」

意外な言葉に残りのせんべいを落としかけた。

「へ!? な、何の共犯者なんです!?」
「実はな、これ、食堂のおばちゃんのおやつを失敬してきたんじゃ!!」
「~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」

(なんてことしてんだこの人は――!!)

言わずと知れた学園最強の食堂のおばちゃん。
その3時のおやつを失敬してくるとは…。
しかもしっかり食べたのを見届けてから教える始末。
だまし討ちに遭った気分だ。

(うわぁ…どうしよう…。)

どうしようと思ったところで、腹に入ってしまったものはどうしようもない。

「はっはっはっ!
 食ってしまったものはしょうがない!
 これからどうするか考えるしかないのう。」

能天気な言葉に、兵太夫は思わず頭を抱えてしまった。
学園長は変わらず、ぼりぼりと2枚目のせんべいをかじっている。

3枚目のせんべいをかじりだしたところで、突然

「兵太夫、武家には武士の誇りがあるそうじゃな。」

こう話しかけてきた。

「はい。」

戦場で勇ましく戦い、手柄を挙げる。
万が一負ければ、名を重んじ、潔く死を選ぶ。
自分が物心ついたころから教えられた、いわば血肉になっている思想だ。
これをしっかり守って実行することで、自分にも自信が持てたし、誇りにも思っていた。
そして何より、家族や家とつながっていると思えるものだった。


「では、忍者の心得とはなんだと思う?」
「?」

(なんだろう――? 
この場合、敵に見つからないとか、忍者はガッツじゃとか、そういうことじゃないんだろうけど…。)


「…武士と同じじゃないんですか?」
「お家のため、名を惜しんで、生き恥をさらすぐらいなら命を捨てる…ということかな?」
「はい。」

兵太夫の答えに、学園長はふむと頷く。
そしてお茶を一口すすり、一呼吸おいて答えた。

「忍者には、そんなものはない。」
「えっ!?」
「忍者は生きて帰る事。それが一番の心得じゃ。」
「…もし…任務に失敗したときも?」
「そうじゃ。何が何でも生きて帰ることを優先する。そのためには何でもする。
 逃げるためなら敵に土下座し拝み倒し、必死に命乞いもする。」
「…。」

あっけにとられてしまった。
そんな考えは、兵太夫の中にひとかけらもなかった。
常に、自分の家に誇りを持ち、万が一破れて生き恥をさらすなら切腹せよ。
それが当たり前であった。

その常識が、根っこから崩された。

「そこまでして…生きることが大事なんですか…忍者には?」

少し怪訝な顔をした兵太夫の疑問に、
かつて天才忍者と言われたこの老人は、笑って答えた。

「その集大成がわしじゃ。」

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2015/12/13 ♪忍たま小説♪ Comment(0)

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