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2025/01/08

紅葉の宿【その1】

《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。
内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。

中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》

=============================================



(なんだよ。
いらないなら、産まなけりゃよかったじゃないか。)


1人の子供が障子越しに女たちのおしゃべりを見上げている。
沼底から這い上がってくるような視線で、音もなく聞いている。


「もうお兄様たちが3人もいらっしゃるからねぇ…。」
「いまさらどこかの領地を…というわけにもいかないでしょうし…。」
「まさかこの御歳でお子ができるなんて…ねぇ…。」
声の主たちは、この城の女中たちだ。


(仕方ないじゃないか。
 もうこの世にいるのに、どうしろってんだ。)


「でもねえ…こうあからさまに…。」
「仕方ないわよ。御方様には気の毒だけど…私たちにはどうしようもないもの」


もう聞きなれている。
耳に何度も入っている。
でも何回聞いても嫌な気分だ。





【紅葉の宿】





バンッ!

「まあ、どうしたのです?」

転げるように部屋に入り、後ろ手に障子を鳴らした兵太夫に、母は声をかけた。
見れば口をへの字に結びうつむきながら、何かを必死に堪えている。


(…また何かあったのだ。)


こうなると、この息子は何を話しかけても答えない。
尋ねたところで、怒った地蔵のような顔で何も言わないだろう。


(悔しいのであろうなぁ…。)


数え年でたった5つ。それにしても、この強情さは兄弟の中でも群を抜く。

だが、今はその気持ちもわからなくはない…。

すっと傍らに寄り添い、ぼさぼさになった髪をなでる。
それ以上、母はなにも聞かず、あやすように語りかけた。

母「…兵太夫、母が髪をすいてあげましょう。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



兵太夫の癖のない髪を、赤い櫛がするすると通っていく。
手ずから御前が髪を梳いていく。

「兵太夫様の御髪は母上様にそっくりでいらっしゃいますね。」


老女の萩野が目を細めてみている。

「私も昔はお方様の御髪を梳いて差し上げたのですよ。それがそのお子の御髪を梳いてあげられるようになるなんて…。」

昔を懐かしむように感慨深げに言う。
この老女は母の実家、笹山家から嫁ぎ先まで、ずっと仕えている。
いわば、母のような存在である。

綺麗に髪を結い終わった後、
御前は鏡越しに語りかけた。

「兵太夫。この櫛をごらんなさい。」

首を後ろにひねり、母の手の中を見る。
そこには先ほどまで自分の髪を梳いていた櫛。

なにかわからず、きょとんとした目を向けた。

「この櫛の模様、何かわかりますか?」
「?? 紅葉…ですか?」

その答えを聞くと、母はにっこりと笑顔で答えた。

「そう、兵太夫が生まれた時、紅葉がちょうど色づく季節だったのですよ。
 緑からだんだんと赤くなっていく紅葉と、日に日に大きくなっていくあなたの姿が相まって…。
 あなたが生まれて1年たった時に、記念にこの櫛を作らせたのです。」

手の中の櫛は小ぶりだが、赤い漆塗りでつやつやとしていた。
細工にしても、子供心にも細かくきれいだと思えた。


多くの側室の中の一人であるこの母が作らせるには、高価なものであったろう。


手の平に包むようにし、愛おしげに見つめている。

「何と言われようとも、母はこの櫛は手放しません。
 兵太夫もそのことを心に留めおくように…。」

「…はい!」

言葉にして考えられるまで、難しいことはまだわからなかったが、
きっと母はいつまでも自分のそばにいてくれる。いつも味方でいてくれる。
そう思えた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


バンッ!

「母上!見てください!」

兵太夫が、目を輝かせて母の部屋に飛び込んできた。

見れば手には小さな折鶴。
だが、普通のおり方ではない。

「これはね、尻尾を引っ張ると羽がパタパタするんです!」

おり方を工夫したらしく、尾を引っ張ると、
鶴の羽がパタパタ羽ばたくような仕掛けになっている。

「まあ、面白い…。兵太夫、良く考えましたこと。」
「へへっ」

大好きな母にほめられ、照れくさそうに鼻を掻きながらも、
幼心に得意になった。


それからだ。兵太夫の発明癖が出てきたのは。


最初のうちは、ただ母にほめられたいだけであった。
小さなものや人形が好きな母には、二つ折りの紙をひらくと飛び出す仕掛けの手紙を作ったり、
重いものが持てないと老女の萩野がぼやけば、自分のおもちゃであった引き車に手を加え、簡単な台車を作ったりと…。
どんどん作れるもの、考え出せるものが増えていった。


城内でも、兵太夫の発明癖は有名になっていった。

>>NEXT

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2014/08/20 ♪忍たま小説♪ Comment(0)

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