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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。
内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴
えないで☆》
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それから4年がたった。
夏の陽が照りつけるなか、兵太夫は池で水汲み水車の実験をやっていた。
中が空洞になっている竹筒を軸にし、そこに側面の一部を開けた小さな竹筒を、放射線状に付けた水車の模型だ。
それを回すことで水を汲み上げる。
汲み上げた水は、小さな竹筒を通り、次々と中心の竹筒に流れ込み、軸の受け台についている水受けに入る。
水受けに入った水は、今度は竹の樋を通って、池の外の桶に入る。
こうやって、どんどん水が池の外に汲まれていく仕組みだ。
なぜそんなものを作り始めたかというと、その少し前、父から昔の合戦の話を聞いた。
その中に、城内の井戸の水が枯れた際、兵士から決死隊を募って城外にある川の水を汲みに行かせたという話があった。
当然、犠牲になったものも多かったそうだ。
父としては、息子たちに先祖たちの戦を聞かせ、自分たちの戦の教訓にしてほしかったのだろうが、
兵太夫が興味を持ったのは、勇ましい武勇伝ではなく、犠牲を出さずに危機を乗り越えられるものを作れないかということ
だった。
―――これがあれば、また戦があった時、誰も危険なこともしなくて済むようになるだろう。
――そして今度は父上にもほめてもらいたい。
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父にはほとんど会えない。
たまに母の部屋に渡ってくるが、様子を見に来るといったところだ。
自分に対しては一瞥するのがせいぜい。
「息災か。」とすら問わない。
世継ぎである兄と違って、興味が無いようだった。
もともと兵太夫の母は、戦に負けた笹山家から人質同然に輿入れした。
母と父は、親子ほど年が違う。
むしろ一番上の兄の方が、母と歳が近いぐらいだ。
だが、まだ幼く狭い兵太夫の世界には、そんな事情の入り込む隙などなかった。
ただ、父上に見てほしい。
兄上と同じではなくとも、せめて僕のからくりを見てほしい。
――本当は、母上のように褒めてくれるといいんだけどな…。
彼の世界は、まだ希望だけで満たされることができた。
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わくわくしながら、兵太夫は水車を水に入れ、回してみた。
だが、実際やってみるとなんだかうまくいかない。
頭で考えていたことと違い、思い通りには動いてくれない。
自分の手先すら、まだ思うように動いてくれないのだ。ときどき本当にもどかしくなる。
一生懸命直しては動かし、動かしては直していると、大人たちの声が聞こえてきた。
――利発な若様じゃのう。
――いや全く。我々も想像のつかないようなものを次々作られておる。
――これは軍師としての才能があるかもしれんのう。
城の廊下から、家臣たちの関心する声が聞こえる。
兵太夫は少し得意になった。
ただ照れくさいので、そのまま背中を向けて聞こえないふりをし、黙々と作業を続けるつもりだった。
しかし、次に聞こえた言葉に、照れくささも幼い慢心もすべて打ち砕かれた。
――しかし惜しいのう…賢かろうと、からくりいじりでは…
――せめて武芸に秀でてくれれば、お家の中でも立場が上がろうに…
――いや、ご兄弟でも一番末の、しかもお部屋様のお子だ。どう出来が良くても人質に出されるのが常だろう。
無事だとしても元服する頃には、兄君たちは三十路すぎ。出る幕はなかろう。
ぽっかりと穴が開いた。
自分の真ん中だ。
そこからさっきまでの楽しさや嬉しさが抜け去り、空っぽになった。
虚しい。
真夏なのに、その穴にひゅうひゅうと冷たい風が通り過ぎていく
分かっていた。
十分すぎるほど、本当は自分でも分かっていたのだ。
もしかしたら、認めてくれるかもしれないという期待もあった。
周囲にも、兄にも、父にも。
だが今、嫌というほど目の前に突き付けられたのだ。
――――そうなんだ…。どれだけ頑張っても…勉強しても…
僕の力を役立てることはできないんだ…。
池にさぶんと沈み、水中でひとしきり泣き叫んだ。
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