《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。
内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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夏の暑さがひと段し、山々が色づいてくるころ。
兵太夫は1人夕暮れの部屋にこもっていた。
目の前にはぴたりと閉じられた襖がある。
その向こうには、母が病に伏せっていた。
風邪をこじらせ、労咳となったのだ。
おそらく父からうつされたのであろう。
父も若い頃、労咳を患ったが、ここ何年と小康状態で療養を続けていた。
労咳は一度かかると「完治」するのは難しい。
感染した時には、すぐ発病せず、そのまま体に住み続け、
体力の弱った時などに、好機とばかりに内部から牙を向けてくる。
父の病状は一進一退だったが、体力もあり頑健な肉体を持った父は、
今すぐ生活に支障をきたすというものでもないため、この城内の公務はすべて取り仕切っていた。
だが、その相手を務めた母は同じようにいかなかった。
みるまに高熱をだし、呼吸もままならない重篤な状態に陥った。
父が憎かった。
人質として連れてこられた母。
特別な感情もなく、政治の手段として側室にした父。
生まれてしまった、場違いな自分。
これほど不幸な三者三様があるだろうか?
父さえいなければ、母は病気にならずにすんだかもしれない。
父さえいなければ、母は戦利品として、敵家の奥に活けられる花になることもなかった
父さえいなければ、そんな母から自分が生まれてくることもなかった。
母の病室には入れない。
うつる病であるため、近づかないよう萩乃にも医者にもきつく言い含められていた。
襖一枚隔てたこの部屋が、今一番母に近い。
1人正座しながら、兵太夫は袴をわしっと掴みこんだ。
――――僕は何もできない…。
ただ母の容体を気にかけながら、隣室で大人しく待つ。
それが兵太夫にできるすべてのことだった。
「…。…。」
不意に自分の名を呼ばれた気がした。
すぐさま襖へ飛びつき、母の名を呼んだ。
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御前が希望したため、特別に病室に入れてもらえた。
枕元へはいけないが、寝台より一段下の畳まで寄ることができ、母の顔がよく見えた。
久々に見た母は痩せ衰ただえてはいたが、熱のせいか白い顔に赤みが差し、目は潤んでいた。
(きれいだな…。)
正直、やつれたのがかえって透き通るような美しさに見えた。
(病気じゃないみたいだ…。)
もちろんそんなことはない。
事実、母は苦しそうに呼吸している。
それに反して、心のどこかで、目の前の事実を否定していた。
「…兵太夫…。」
ヒューヒューとなる喉の奥から、か細い声で名前を呼ばれた。
「はい、母上。」
「これから母の言うことを、よく聞いてくださいね…。
…あなたにはこの後も、たくさんの出来事が待っています。
それに、ひとつひとつどうするか自分で考えて…
あなたが一番良いと思う生き方を選んでください。
けれど…決して自分を恥じるような生き方はしてはなりません。
何が正しく、間違っているのかは、独りよがりな見かたでは見えません。
これから出会う人たちを大切に…信頼できる、尊敬できる人を見つけなさい。」
「…はい…。」
母の言葉の意味はよくわからなかった。
ただ、いま聞き逃したら、もう二度と聞けない。
焦りとも不安ともいえない感情が、理解させようと兵太夫を動かしていた。
息子のそんな様子を見抜いた母は、安心させるように微笑んで見せた。
「よいのです。今はわからずとも。
ただ母の言葉を心に留めておいてください。
いつか、思い出す日も来ましょう。
けれど…あなたがどんな道に進もうとも、母はいつもあなたの行いを見ています。
良いことでも、悪いことでも、母は知らぬ振りなどできません。
私は常に、あなたの母です…それをよく覚えておいて下さい。」
「…。」
どういうことだろう…。
疑問と不安がないまぜになり、返事ができなかった。
ただ、何も言えず、優しい笑顔を見つめるしかなかった。
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2014/09/01
♪忍たま小説♪