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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。 内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。 そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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夕方、
ヒグラシの声を聴きながら、兵太夫は昼間のいたずらのお返しを考えていた。
――とはいえ、どうやってお返ししたもんだろう…?
落とし穴はもう自分が引っかかっている
地味なものより派手なものがいい
びっくりはさせたいけど、ひどいことはしたくない
――そうだ。
昔の好奇心がむくむくとわいてきた。
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「なにやってんの~~?」
「えっ?」
急に降ってきた声に顔を上げると、そこには同室の三治朗の顔があった。
(全然気づかなかった…。)
どうやら図面を書いているうちに、熱中しすぎてしまったようだ。
「兵太夫、これなーに?何かの図面?」
「…うん、」
「すごい!僕もこういうの好き!
ねえ!これどんな機械なの?」
三治郎は目をキラキラさせて聞いてくる。
ここの仕組みはどうなっているのか、この工夫はすごいとか、ここはこのままじゃ動かないんじゃないの?などなど。褒め言葉やら、アドバイスやら、様々な言葉が飛んでくる。
細かいところまで見ているというのは、それだけ興味があるということだ。
(ほんとに好きなんだな…。)
「面白いねー兵太夫、こんなの作れるんだー!」
無邪気に感心したり、難しい顔をして考え込んだり…そんなころころ変わる三治郎の顔を何とはなしに見ていると、
驚くほどすんなりと言えた。
「三治郎…あのさ…
…一緒に作ってくれる…?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
協力者を得たとはいえ、作れるものは一つ。
というわけで、試しに小さな模型を作ってみることにした。
まずは材料調達と忍術学園を回っていたところ、用具委員の食満先輩に声をかけられた。この先輩は怖い人なのかと思っていたが、案外下級生の面倒を見るのが好きなようで、
「なんだ?モノづくりに興味があるのか?よーし、ここにあるやつなら何でも持って行っていいぞ!」と言ってくれた。
しかも、『皆で食え!』とお菓子までくれ、頭をなでなでされた。
――なんかちょっと意外だったなぁ。
拍子抜けしたというか、ほわほわしたような不思議な気分になりつつ、図面に沿って三治郎と一緒に作っていく。
時々、撫でられた頭がくすぐったいような気がして、自然と顔が笑ってしまいそうだった。
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「ずいぶん面白いものだな。自分で作ったのか?」
試作品をいじる手元から目をあげると、そこには優しい笑顔を浮かべた先生が立っていた。
「土井先生!」
「どれどれ~先生にもよく見せてくれ~…
なるほど…よく考えたものだな…。」
試作品を受け取った先生は、ひっくり返したり、あちこち角度を変え、じっくりとみている。
「すごいな!兵太夫はからくりの才能があるぞ!
いやー、1年は組にこんな天才がいたとは!」
まるで自分のことのように喜んでくれている。
その喜びようを見ているのがどこか辛かった。
「兵太夫は将来有望だな!
これで教科も実技もできたら、何も言うことなしだ!」
期待してるぞとでもいうように、わしわしと頭を撫でる。
ただ、その優しい声の隙間から、昔聞いた大人たちの声がよみがえってくる。
――しかし惜しいのう…賢かろうと、からくりいじりでは…
――せめて武芸に秀でてくれれば、お家の中でも立場が上がろうに…
――どう出来が良くても人質に出されるのが常だろう。
(そうだ…どれだけ頑張っても…勉強しても…
僕の力は誰にも求められていないんだ…。)
忘れかけていた、ぽっかりとした穴から、
ぽつりと声が出た。
「でも、先生…。
武家ではこんなからくり、役に立ちません。」
頭をなでる手が止まり、離れた。
次の瞬間、ぽんっと両肩に温かい手が力強く降りてきた。
びっくりして顔をあげると…
自分と同じ目線に、土井先生の目があった。
「兵太夫、いいか?
兵太夫の才能は兵太夫だけにしかないものだ。
いわば、一生の財産さ。それをどういう風に役立てるかは、自分次第だ。
役にたてられないと最初から決めつけるもんじゃない。
…確かに、武家には武力が一番求められるだろうが、ここではそうじゃない。何でも使うのが忍者だ。
何でもやったもの勝ち。役立てたもの勝ち。それが物でも才能でもな。
一番やっちゃいけないのは、やる前から『どうせなんのためにもならない』とあきらめることだ。」
それに、先生は兵太夫のからくりをもっと見たい―――
「僕のからくりを…見たい…?」
「あぁ!」
目の前の笑顔に、裏はない。
目線はずっと同じままだ。
しゃがみこんで、小さい自分の方に手を置いて、同じ高さで見てくれている。
―――今まで、大人たちはこうして僕をまっすぐ見てくれただろうか?
ずっと周りの大人たちの目線に届こうと背伸びしていた気がする。
感心しながらも、期待しない家臣たち。
そして、たまに来る父。
その目線の高さに、視界に、入り込もうと必死になっていた。
ならざるを得なかった。
―――もういいんだ。
そう思ったとき、ふーっと息が抜けていく気がした。
ここではもう「絶対出来なきゃいけない」なんてことはない。
「これをやっちゃ変な目でみられる」こともない。
なにより、枠から外れることに怯えなくてもいい。
―――これが「安心」することだと気づいたのは、もっと後だった。
そんな兵太夫の顔をみながら、土井先生はちょっとした忠告をした。
「忍者の学校だからな。仕掛けやからくりはそこらじゅうにある。
見抜いてなんぼだ。大怪我させない程度ならいくらでも作っていい。
でも、ほどほどにしておいてくれよな。」
その後、忍術学園のあちこちにからくりが増えた。
兵太夫に最初にいたずらを仕掛けた主は、今では同室者とともに、恰好の試験体になったのは言うまでもない。
そんな時に、嫌な思いをする事件が起きた。
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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。 内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。 そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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忍術学園の朝は早い。
毎日、長屋で寝起きし、
教科の授業を受け、実技を習い、
ご飯を食べ、風呂に入って寝る。
見る物も合う人も知らないことだらけだったが、
みんなと一緒に、食べるご飯はおいしかった。
長屋は忍者屋敷なので、あちこちに生徒が作った仕掛けがある。
掛け軸の裏に抜け穴はもちろん、
床下や天井からから突然出てくる先輩、
たまに漆喰や豆腐が飛んでくることもある。
しばらくすると、自然にみんなの名前と顔を覚えていた。
仏頂面でいたくとも、1人になりたくても、誰かが放っておかない。
同じ部屋になった三治郎は、いつもニコニコ話しかけてくる。
誰かしら廊下を走っては、先生に怒られ、
掃除の時間には、チャンバラして伊助に怒られ、
風呂に入れば、お湯の掛け合いから、大騒ぎに発展した。
退屈する暇も、寂しいと思う暇も与えてくれなかった。
これだけ周りが騒がしいと、
一人、意固地になっている方が馬鹿馬鹿しくなってくる。
真冬にいくら雪がつもり、家や人々の暮らしが埋もれようとも、
春になれば、どれだけ大きな雪の壁であろうと
すべていつの間にかすべて溶けていく。
雪解けの穏やかな空気の中、青々とした緑が芽吹いていくのを、兵太夫は自分の心で感じ取っていた。
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力強い日差しと、むせ返る草のにおいがする。
もうすぐきらきら光る川の水が恋しくなる季節だ。
廊下で兵太夫が、ぼんやりと「もうすぐ夏休みか…」ともの思いにふけっていたころ
「おーい兵太夫~~!!」
庭先で呼ぶ声がする。
目を向けると、同じ1年は組の団蔵が、手を振っている。
何のかげりもない眩しい笑顔だ。
つい呼んでいる方へ駈け出してしまう。
「なに?団蔵―――…
…うわぁぁぁーーーーー!!!!!」
団蔵にあと数歩というところで、急に地面がなくなった。
ドスンと落ちた先で目を開けると、夏なのに暗くてひんやりとした土の中…。
兵太夫は直径1メートルはあろうかという穴に落ちていた。
「なんだよ!このでっかい穴!!」
幸い浅かったので、すぐに這い出だした。
いたずらの主は、まぶしい日差しを背中にして、顔をくしゃくしゃにして笑っている。
「すごいだろ!!
綾部先輩が掘ったタコツボ、もらったんだ!
こんだけでかけりゃ、誰かしらひっかけたくなるじゃないか~!」
「毎日掃除もしないで、なにしてるのかと思ったら!
落とし穴作ってたのかよ!」
ごめんごめんと謝りながら差し出された手。
強い力で引っ張り上げられながら、単純ないたずらに見事に引っかかってしまったことに兵太夫はふてくされていた。
「…。」
「? どうしたの?」
そんな自分の顔を団蔵が不思議そうに見ていたので、思わず問いかけた。すると、
「いや、兵太夫もそんな膨れたモチみたいな顔すんだなーって思って!
もっと冷めた反応するのかと思ってたよ!
面白いなー!!」
そしてまたげらげらと笑いだす。
そんないたずらの主を見ながら、
お返しに何かイタズラしてやろうと思った。
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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。
内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。 もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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白い雪が次第に解け、ようやく野山や町が、本来の色を取り戻した頃。
兵太夫はある山に向かっていた。
隣には、同じく旅姿の萩乃がいる。
忍術学園に入ることが決まった後は速かった。
いつの間にか手続きがなされ、荷物がまとめられ、
母と過ごした城内から、与えられた城下の町屋へ移り、
山里の質素な平屋へと移された。
そこがこれからの我が家であり、萩乃だけが家族となった。
今は、これから6年間を過ごすところへと向かっている。
大きな門の前に、大きな看板が掲げられている。
門をたたく。
ドンドンという音が、今までの家や思い出、
全てから引き離す最後通告のように聞こえた。
ぎぃっと、くぐり戸が開く
自分はここから、この中に入らなければならないのだ。
「はーい、どなた~?」
のほほんとした、人のよさそうな青年だ。
「笹山家からまいりました。萩乃と申します。
入学の手続きにまいりました。」
「は~い、学園長からお聞きしています~。
では、ご案内しますので。入門表にサインを。」
(…ずいぶん、変わったところだなぁ…。)
今まで自分のいた、大人ばかりの静かで難しい話ばかりのところと違い、
自分と同じくらいの子どもたちの声がたくさんする。
しかも笑い声やはしゃいでいる声ばかりで、とても楽しそうだ。
時たま、何かが爆発する音まで聞こえる。
「あの…大丈夫なんでしょうか?
なにか大きな音が…」
萩乃が心配そうに聞く。
騒ぎ声に混じって、剣と剣が打ち合う音まで聞こえてくる。
「いいんです~。
怪我さえしなければ。なんでもやっていいんです。
それぞれ好きなことだったり、やりたいことやっていいのが当たり前って雰囲気なんです。
僕もへっぽこ事務員なんて言われてますけど、おかげさまでなんとかやっていけてますから~。」
(へっぽこなんて言われて…なんでこんなにのほほんとしてられるんだろう?)
そのまま世間話をしながら離れに案内した青年は、
中に向かって呼びかけた。
「学園長~入学希望のお客様で~す!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
学園長、と呼ばれた老人は、
どことなくいたずら好きそうに見えた。
「兵太夫、と申したかな?
お主は忍者になりたいかの?」
「僕は忍者になんかなりたくありません!」
「これっ!」
思わず萩乃が兵太夫の袖を引く。
――しまった。
半ば追い出されるように、城から出て、
でも自分は武士の息子ということが心の支えとなっていた。
とはいえ、この人にとっては何も関係ない。
そんな人に、意固地になっている自分の気持ちをぶつけたところで、
相手を怒らせるだけだ。
――怒られる!
身構えた次の瞬間、
「かっかっか!!」
目の前の老人は面白そうに、大きな声で笑った。
「よいよい。その意気じゃ。
そうでなくては、うちではやっていけん。」
ポカーンとして見つめ返すと、
「まずは一度、武士だの忍者だのは置いておきなさい。
ここにいるのは、兵太夫という一人の子供じゃ。
この学園にいるからには、子供として毎日元気に過ごしてもらわなきゃらん。
やりたいことをやって、友達もたくさん作っていっぱい遊びなさい。
まあ、それなりに勉強もするがな。
あとは毎日、食堂のおばちゃんのおいしいご飯を食べることじゃ。
お残しだけは許してもらえんから、注意するように。
守ってもらいたいのは、それだけじゃ。」
それから、学園での生活が始まった。
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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。
内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。 もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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母を乗せた白い行列がゆく。
雪国の冬はすべてが白い。
空も、野も、
雪を除いて作ったわずかな道でさえ、両側は白い壁となってそびえたっている。
その中に、母は無言で進んでいく。
――――母上は、白い世界に連れて行かれるのだろうか…
見送る兵太夫の体内には濁流がながれていた。
悲しいと思えば、何かに対する怒りが込み上げてきたり
怒っているのかと思えば、何もできなかった自分を責めていたり
何もできない・あらがえなかったこの力にふがいなさを覚えていた。
ただ母の後をついていけないことだけは分かっていた。
しかし、
母の死を悲しむ間はなかった。
当主である父から兵太夫の処遇が言い渡されたのである。
「兵太夫を、他所で養育する。」
行く先は忍術学園。
身分の違いなく、入学者はみな忍者としての教育を行う、唯一の学校だ。
読み書きそろばんから、体術・戦術・医術まで幅広く教えているため、
ここには、商家の御曹司や跡取りが、高い教育を受けるために入学している。
だが自分の場合は…
「厄介払い」
その文字が見えた。
この決定に真っ先に食って掛かったのは、兵太夫の後見人となった萩野だった。
重臣たちとの評定が終わり、自室に戻ろうとすることろを捕まえ、
毅然として、殿の名前を呼び、追いすがっていく
萩乃「教育させるのであれば、他所でなくとも、家臣の誰かに預けて養育させるなり、親類続きの他家に預けるなり、
選択肢は様々ございますでしょう!!
少なくともお家の外に出してとは…母方の笹山姓を名乗って生きよとは…。
兵太夫様をお捨てになるお考えでございますか!!」
滝のように駆け寄る老女とは反対に、
老木のようにどっしり構えながら、この城の大殿は歩みを進める
「落ち着け、萩野。
考え合ってのことじゃ。
まずは儂の隠居。そして太郎へ家督を継がせるのが最優先じゃ。」
しかし、その程度ではこの女丈夫は引かない。
そもそも、その根性を買われて、笹山家から付老女として今まで仕えてきたのだ。
萩野「兵太夫様は妾腹とはいえ、お子達の中では出来がようございます!
ゆくゆくはご兄弟の片腕になりましょう!
それを…なぜ乱波のようなまねをさせるのです!!」
父は応えない。
萩野も頭ではわかってはいた。
戦国の時代、家中が内部分裂することほど恐ろしいことはない。
一度ほころびが出れば、それを好機とばかりに、鵜の目鷹の目で狙っている近隣諸国から食い物にされてしまう。
お家騒動などもってのほかだ。
何があろうとも、城と国、それを守るためならば、我が子といえども決定は覆さない。
その意味では、父はまさに政治権力そのもの、支配者の姿と言えた。
しかし…
誰でも、心のどこかに譲れないものがあるように、
ただの側室の老女という立場の萩乃にも
譲れないものがあった。
笹山御前・そしてその忘れ形見…兵太夫…。
たとえ命と引き換えにしても、あの子の生きる道を残してやりたい!
「…いい加減にせい。」
大殿の呆れたような…憔悴しきった顔がため息交じりに向く
千年も万年も歳を経たような顔だ。
がばっと、その前に萩乃はひれ伏した。
萩野「大殿様!!どうか!どうかっ!!
兵太夫様と、御方様のお心に叶うよう!どうぞお計らいくださいまし!
お聞き届けられぬ問いのであれば、どうぞ、ここでこの萩乃をお手打ちになさってください!」
「…良いだろう。」
大殿はゆっくりと懐へと手を入れ、得物を取り出した。
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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。
内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。 もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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いつになく寒さが厳しさを増した冬、
兵太夫は10歳の正月を目前に控えていた。
外は朝からしんしんと雪が降っている。
雪が降り積もっていくのと比例するかのように、母の容体は日増しに悪くなっていった。
兵太夫は毎日、母の元に通った。
容体が悪化してからは、うつすと悪いとのことで病室には入れなかったが、
入れずとも、せめて母のためにと声を聞かせていた。
母の声は日増しに弱くなっていたが、襖越しでもちゃんと聞こえている。
おそらく襖のすぐそばに床をしいているのだろう。
いつも母の枕元と思われるところで、話かけていた。
朝の「おはようございます。」に始まり、
夜の「お休みなさいませ。」に終わる。
そんな毎日が続いていた。
いつものように、寝る前のあいさつを終え、自室に戻ろうとしたとき、
母に呼び止められた。
いつも最後は「温かくしておやすみなさい。」と答える母だったが、この日はどうも様子が違った。
「兵太夫…。」
「はい。ここにおります。」
「しっかりと生きるのですよ…自分に恥じない生き方を…。
殿の御子は何人もいますが、私の子はあなた一人…。
母だけはいつもあなたのそばにおります…それだけは、心に留め置いて…。」
「…。」
「兵太夫?」
はっと何かが込み上げるのに気づいた。
ぐっとこらえ、上を向き、
母には精一杯大きな声で返事をした。
「はいっ!ちゃんと聞いております!ここにいます!母上!」
「…よかった。」
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兵太夫の足音が聞こえなくなるまで、御前は耳を澄ませていた。
やがて、小さな足音は雪の降る音にまじっていった。
それを聞き届けたかのように、天井に目を移し、御前はつぶやいた。
「萩乃…。」
「はい…。」
「…私が死んだら…あの子はどうなろう…。」
次の朝は、真冬には珍しくちらちらと雪が舞っていた。
その雪に溶け入るように、笹山御前は身罷った。
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