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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。
内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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母と会った後、兵太夫は別棟の縁側にいた。
目の前には以前、水汲み器の実験をした池がある。
―――母の様子を見ていられなかった。
母のそばにはいたい。
母に死が迫っているのは幼心にもわかった。
だが幼いからこそ、死という無限に飲み込まれそうな闇が怖かった。
母のそばにいたら、自分もその闇に飲み込まれてしまいそうな気がした。
…そして、その闇に何も対抗できない、自分のふがいなさも。
しばらく何をするわけでもなく、縁側でじっとしていた。
「なんじゃ?このようなところで何をしておる。」
不意に頭上から太い声が聞こえた。
一番上の兄、この家の嫡男だ。
15歳も歳の離れた長兄は、父に似て大柄。
正室の子であり、実力も申し分なく、次期当主として家臣たちから期待されていた。
今も数人の家臣たちを引き連れて、何事か話し合いに向かうようだ。
後ろには、二番目の兄がいる。
一番目の兄と2つ違いだが、性格は穏やかで優しかった。
この兄も正室の子であり、今は長兄の右腕としてなくてはならない存在となっていた。
―――自分とは、何もかも違う。
望まれて生まれ、立場もあり、周囲も期待している。
じりじりとした悔しさが、思わず目に出てしまう。
「何を不貞腐れておる。早う母の元へゆけ。」
そう言い捨てて兄は去っていった。
去っていく兄の背中を眺めていると、さっきまで悲しさで沈んでいた気分が、もやもやと湧き上がり、本当に「不貞腐れ」
てしまった。
次兄が「兵太夫、気を悪くするなよ。」と一言優しく声をかけてい無ければ、癇癪を起していたかもしれない。
仕方がないので、また何をするわけでもなく、もやもやとした気持ちが過ぎ去るまでじっと我慢することにした。
「おい、兵(ひょう)の助。」
今度はからかうような声が降ってきた。
こんな呼び方をするのは三番目の兄だ。
顔をあげると、やはり。
自分とは8つ違いで、今年17になるはずだ。
兄弟では一番歳が近いことや同じ側室の子という立場もあり、仲が良かった。
「なんだその顔は?」と言いながら、弟のふくれっ面を面白そうに覗き込んでいる。
ふぅっ
仕方ないな、といった面持ちで、兄は息をつく。
「そんなところでうじうじしていたところで、治るものも治らんだろ。お前さんも母君も。
それっ!私と一緒に来い!!」
そういうと、兄は兵太夫の小さな体をひょいと小脇に抱え上げた。
放せ!放せ!と暴れる兵太夫をものともせず、そのまま厩舎へ向かっていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さっそうと秋の野を栗毛色の馬が走っていく。
兄は前の鞍に兵太夫を乗せて、ススキの野をまっすぐ進む。
兵太夫は観念したように大人しく乗っている。
「よしっ!どうどうっ!」
河原の前で馬を止め、兄はひらりと降り立ち、兵太夫を抱き上げ、馬から降ろした。
『なぜ兄上はこんなところに連れてきたんだろう?』
兄は兵太夫の疑問に気づいているのか、いないのか。
疑問符のついた視線を背中に受けつつ、その辺にある柿の木から、色づいた実を適当に2、3個失敬している。
「ほれ、食え。うまいぞ。」
兵太夫にも1個投げてよこし、自分も豪快にかぶりついている。
突然連れ出されたこともあり、兵太夫はまだ混乱しながら、ぼぉーっと柿の実を眺めていた。
(これ…渋柿…じゃないのかな…?)
目の前では兄がむしゃむしゃうまそうに柿を食べている。
甘柿なのだろう。
ほっと一息ついて、自分も柿にかぶりついた。
「ぶっ!!!」
渋柿だった。しかもかなりの。
恨めしい目で兄を見上げると、兄は豪快に笑っている。
「はっはっはっはっ!!!!!
用心深いお前にしては単純に引っかかってくれたのう。
いや、一瞬気づかれたかと思ってな。
お前が気づかなければ、私も渋柿を食い続けなければならんかったわ。」
兄もペッと柿の実を吐く。
しょうもない、いたずらをしてくれるなぁ…。
兵太夫は半ばあきれながら、そばにある石に腰掛けた。
兄も横に座り、突然こう切り出した。
「兄たちの幼名を知っとるか?」
「?」
「太郎・二郎・三郎じゃ。
ちなみに父上の兄弟もそうだ。
父上も叔父上も、太郎・二郎・三郎じゃ、紛らわしいことこの上ないわ。」
なんで今さら言うのだろう?
不思議そうに見ていると、兄は笑うのをやめ、川を見ながらつぶやいた。
「…父や兄を恨むなよ。」
「…。」
「太郎の兄上は…お前に、少しでも母と共に過ごせと言っておるのだ。」
「あっ…。」
一番上の兄は嫡男として、生まれた時から当主としての英才教育を受けている。
父はおろか母とも別々に暮らし、守役・重臣たちに囲まれて育った。
二番目の兄も、良き参謀になるため育てられた。
…兄たちの母は、何年も前に亡くなっている。
その時、上の兄2人は母とともに過ごせたのであろうか?
「昔、兄上はあれでいたずら好きだったのだ。
子供の頃は、私が一番末っ子だったからな。よくしょうもないいたずらに引っかかっては泣かされたもんよ。
落とし穴から、あんこのない饅頭まで…。そのたびに次郎の兄上に『弟をいじめないでください!』と小言を言われてい
たもんだよ。
…今のお前に良く似ておる。兄上は。」
「…。」
先ほど城の廊下で見た、去っていく兄の背中が思い出される。
大きすぎて怖いものと思っていたが、今はさびしいような、優しいような。
なんとなく、そう思えていた。
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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。
内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
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もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。
内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴
えないで☆》
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それから4年がたった。
夏の陽が照りつけるなか、兵太夫は池で水汲み水車の実験をやっていた。
中が空洞になっている竹筒を軸にし、そこに側面の一部を開けた小さな竹筒を、放射線状に付けた水車の模型だ。
それを回すことで水を汲み上げる。
汲み上げた水は、小さな竹筒を通り、次々と中心の竹筒に流れ込み、軸の受け台についている水受けに入る。
水受けに入った水は、今度は竹の樋を通って、池の外の桶に入る。
こうやって、どんどん水が池の外に汲まれていく仕組みだ。
なぜそんなものを作り始めたかというと、その少し前、父から昔の合戦の話を聞いた。
その中に、城内の井戸の水が枯れた際、兵士から決死隊を募って城外にある川の水を汲みに行かせたという話があった。
当然、犠牲になったものも多かったそうだ。
父としては、息子たちに先祖たちの戦を聞かせ、自分たちの戦の教訓にしてほしかったのだろうが、
兵太夫が興味を持ったのは、勇ましい武勇伝ではなく、犠牲を出さずに危機を乗り越えられるものを作れないかということ
だった。
―――これがあれば、また戦があった時、誰も危険なこともしなくて済むようになるだろう。
――そして今度は父上にもほめてもらいたい。
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父にはほとんど会えない。
たまに母の部屋に渡ってくるが、様子を見に来るといったところだ。
自分に対しては一瞥するのがせいぜい。
「息災か。」とすら問わない。
世継ぎである兄と違って、興味が無いようだった。
もともと兵太夫の母は、戦に負けた笹山家から人質同然に輿入れした。
母と父は、親子ほど年が違う。
むしろ一番上の兄の方が、母と歳が近いぐらいだ。
だが、まだ幼く狭い兵太夫の世界には、そんな事情の入り込む隙などなかった。
ただ、父上に見てほしい。
兄上と同じではなくとも、せめて僕のからくりを見てほしい。
――本当は、母上のように褒めてくれるといいんだけどな…。
彼の世界は、まだ希望だけで満たされることができた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
わくわくしながら、兵太夫は水車を水に入れ、回してみた。
だが、実際やってみるとなんだかうまくいかない。
頭で考えていたことと違い、思い通りには動いてくれない。
自分の手先すら、まだ思うように動いてくれないのだ。ときどき本当にもどかしくなる。
一生懸命直しては動かし、動かしては直していると、大人たちの声が聞こえてきた。
――利発な若様じゃのう。
――いや全く。我々も想像のつかないようなものを次々作られておる。
――これは軍師としての才能があるかもしれんのう。
城の廊下から、家臣たちの関心する声が聞こえる。
兵太夫は少し得意になった。
ただ照れくさいので、そのまま背中を向けて聞こえないふりをし、黙々と作業を続けるつもりだった。
しかし、次に聞こえた言葉に、照れくささも幼い慢心もすべて打ち砕かれた。
――しかし惜しいのう…賢かろうと、からくりいじりでは…
――せめて武芸に秀でてくれれば、お家の中でも立場が上がろうに…
――いや、ご兄弟でも一番末の、しかもお部屋様のお子だ。どう出来が良くても人質に出されるのが常だろう。
無事だとしても元服する頃には、兄君たちは三十路すぎ。出る幕はなかろう。
ぽっかりと穴が開いた。
自分の真ん中だ。
そこからさっきまでの楽しさや嬉しさが抜け去り、空っぽになった。
虚しい。
真夏なのに、その穴にひゅうひゅうと冷たい風が通り過ぎていく
分かっていた。
十分すぎるほど、本当は自分でも分かっていたのだ。
もしかしたら、認めてくれるかもしれないという期待もあった。
周囲にも、兄にも、父にも。
だが今、嫌というほど目の前に突き付けられたのだ。
――――そうなんだ…。どれだけ頑張っても…勉強しても…
僕の力を役立てることはできないんだ…。
池にさぶんと沈み、水中でひとしきり泣き叫んだ。
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《以下の文章は、兵太夫の妄想文です。
内容はひたすら妄想ですが、兵太夫の過去捏造・実家設定捏造などがあります。
特に回想部分は、子供の虐待に近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
そのそれに対する登場人物たちのアドバイスがありますが、あくまで素人の小説なので、肯定しないでください。
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(なんだよ。
いらないなら、産まなけりゃよかったじゃないか。)
1人の子供が障子越しに女たちのおしゃべりを見上げている。
沼底から這い上がってくるような視線で、音もなく聞いている。
「もうお兄様たちが3人もいらっしゃるからねぇ…。」
「いまさらどこかの領地を…というわけにもいかないでしょうし…。」
「まさかこの御歳でお子ができるなんて…ねぇ…。」
声の主たちは、この城の女中たちだ。
(仕方ないじゃないか。
もうこの世にいるのに、どうしろってんだ。)
「でもねえ…こうあからさまに…。」
「仕方ないわよ。御方様には気の毒だけど…私たちにはどうしようもないもの」
もう聞きなれている。
耳に何度も入っている。
でも何回聞いても嫌な気分だ。
【紅葉の宿】
バンッ!
「まあ、どうしたのです?」
転げるように部屋に入り、後ろ手に障子を鳴らした兵太夫に、母は声をかけた。
見れば口をへの字に結びうつむきながら、何かを必死に堪えている。
(…また何かあったのだ。)
こうなると、この息子は何を話しかけても答えない。
尋ねたところで、怒った地蔵のような顔で何も言わないだろう。
(悔しいのであろうなぁ…。)
数え年でたった5つ。それにしても、この強情さは兄弟の中でも群を抜く。
だが、今はその気持ちもわからなくはない…。
すっと傍らに寄り添い、ぼさぼさになった髪をなでる。
それ以上、母はなにも聞かず、あやすように語りかけた。
母「…兵太夫、母が髪をすいてあげましょう。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
兵太夫の癖のない髪を、赤い櫛がするすると通っていく。
手ずから御前が髪を梳いていく。
「兵太夫様の御髪は母上様にそっくりでいらっしゃいますね。」
老女の萩野が目を細めてみている。
「私も昔はお方様の御髪を梳いて差し上げたのですよ。それがそのお子の御髪を梳いてあげられるようになるなんて…。」
昔を懐かしむように感慨深げに言う。
この老女は母の実家、笹山家から嫁ぎ先まで、ずっと仕えている。
いわば、母のような存在である。
綺麗に髪を結い終わった後、
御前は鏡越しに語りかけた。
「兵太夫。この櫛をごらんなさい。」
首を後ろにひねり、母の手の中を見る。
そこには先ほどまで自分の髪を梳いていた櫛。
なにかわからず、きょとんとした目を向けた。
「この櫛の模様、何かわかりますか?」
「?? 紅葉…ですか?」
その答えを聞くと、母はにっこりと笑顔で答えた。
「そう、兵太夫が生まれた時、紅葉がちょうど色づく季節だったのですよ。
緑からだんだんと赤くなっていく紅葉と、日に日に大きくなっていくあなたの姿が相まって…。
あなたが生まれて1年たった時に、記念にこの櫛を作らせたのです。」
手の中の櫛は小ぶりだが、赤い漆塗りでつやつやとしていた。
細工にしても、子供心にも細かくきれいだと思えた。
多くの側室の中の一人であるこの母が作らせるには、高価なものであったろう。
手の平に包むようにし、愛おしげに見つめている。
「何と言われようとも、母はこの櫛は手放しません。
兵太夫もそのことを心に留めおくように…。」
「…はい!」
言葉にして考えられるまで、難しいことはまだわからなかったが、
きっと母はいつまでも自分のそばにいてくれる。いつも味方でいてくれる。
そう思えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
バンッ!
「母上!見てください!」
兵太夫が、目を輝かせて母の部屋に飛び込んできた。
見れば手には小さな折鶴。
だが、普通のおり方ではない。
「これはね、尻尾を引っ張ると羽がパタパタするんです!」
おり方を工夫したらしく、尾を引っ張ると、
鶴の羽がパタパタ羽ばたくような仕掛けになっている。
「まあ、面白い…。兵太夫、良く考えましたこと。」
「へへっ」
大好きな母にほめられ、照れくさそうに鼻を掻きながらも、
幼心に得意になった。
それからだ。兵太夫の発明癖が出てきたのは。
最初のうちは、ただ母にほめられたいだけであった。
小さなものや人形が好きな母には、二つ折りの紙をひらくと飛び出す仕掛けの手紙を作ったり、
重いものが持てないと老女の萩野がぼやけば、自分のおもちゃであった引き車に手を加え、簡単な台車を作ったりと…。
どんどん作れるもの、考え出せるものが増えていった。
城内でも、兵太夫の発明癖は有名になっていった。
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《以下の文章は、『忍たまたちがもし、スタンドを使えたら』ということを前提に書かれた妄想文です。 スタンドを知らない方は「ジョジョ スタンド」でググってみてください。 内容はひたすら妄想ですが、雷蔵の過去捏造・竹谷の実家設定捏造などがあります。 特に雷蔵の回想部分は、いじめに近い表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。 また、それに対する先輩たちのアドバイスがありますが、あくまで個人的な意見ですので、この主張が正しいというわけではありません。 中二病的発言もありますが、それは華麗にスルーしてください。お願いです。 もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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三郎は1年生をこの場面が見えないところに待たせ、黙ってこのやり取りを見つめていた。
今や浮浪人となった元・同級生は、去っていく雷蔵を憎々しげに睨んでいるが…
もう何も言ってこないだろう。
怒りで拳を震わせているが、雷蔵を殴れないことがよく分かっている。
殴れないのだ。
それをやってしまえば、自分は完全に人間として完全に雷蔵に敗北したことになると、さすがに分かっているようだ。
近づいてくる雷蔵と、見向きもされずその場に残される者。
それを眺めながら三郎は、ふと考える。
――人を見る目がなかったな。
ひたすらじっと耐え続けることができる強いものを、小心者と見下し嘲ることしかできなかった。
物事の本質を見極めるのは難しいが、それでも人間は人間らしい心があれば、
心の強さや優しさ、真の価値を知ることができる。
だが逆に、そのことを知ることや感じ取ることを怖がり、
自分よりより弱いものを物色し、強いものには目をそむけ、
表面だけで弱いものだ、格下だと決めつけて攻撃するのは一番卑怯なふるまいだ。
そんな人間は何ものにもなれない。
たとえ生き物として命を長らえても、きっと『人として生きる』ということの意味にたどり着くことはできないだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お待たせ。
そういって、いつものやわらかい笑顔を見せた雷蔵に
三郎は「じゃ、帰るか。」といっただけだった。
飴玉を預けて待たせていた1年生を促し、また帰り道を歩く。
3人は子供ながらに異変を感じとったのか、しばらく大人しかったが…
また元のように、にぎやかに歩き出した。
そんな下級生たちの会話に、変装しながらちゃちゃを入れる三郎。
穏やかないつもの光景を眺め、相棒のいたずらに一言入れながら、
雷蔵は何とはなしに、考えに耽っていた。
――仕返しとは言ったけれど…それでもまだ…。
恨む気持ちが消えるわけじゃない…。
昔、中在家先輩の前で大泣きした時のことを思えば、簡単に割り切れるものではない。
紙屋の彼にしても、完全に許すということは自分はできはしない。
いつまでも心のどこかに「憎い」という負の感情は残り続ける。
――でも…。
彼は、心から自分のやったことを悔いて、誤りをただそうとした。
ふと、抱えた和紙の包みを見る。
人の苦しみの中で、一番つらいと思い、苦しいと思い涙するものは、
自分が取り返しの利かない過ちを犯してしまったという意識だ。
本当はそうではないことができたのに、自分はやらなかった。出来なかった。
自分自身が「しまった」と思うことを振り返り、認めること――
これは本当につらい。
大抵の人間はなんとか言い訳を考えて、自分でそう認めまいとする。
しかし、だからこそ、
自分の行いを認めて、より良い行いをしたいと思い、改められるのは、
人だからこそできるのではないか。
正しい理性にしたがって行動することができる力がもともとなかったのならば、
どうして僕たちは、後悔して苦しむことなんてあるだろう?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
雷蔵が、考えに耽っていたとき、
三郎は彼なりになりに雷蔵に気を遣い、
彼が思考する間、得意の変装で後輩たちの気を引いていた。
目の前には、すごいすごいと素直に感心する後輩たち。
さすがの三郎も素直な賞賛の嵐に照れてきたのか、
努力の結果さと、さらっと答えた。
しん「すごーい!」
乱「鉢屋先輩って「えらい人」なんですね!!」
きり「努力する人のはえらい人なんだって。土井先生が言ってました!」
――「えらい人」…か…。
無邪気な後輩の言葉に、ちょっと考えて、
三郎はこう答えた。
三郎「私は偉い人ではないよ。まあ、変装の天才だけどね。
……天才はそんな偉い人にはなりえないさ。
そうだねぇ…『偉い人』になれる人といったら、当たり前に人を思える人だと思うよ。
これから長い時間はかかるかもしれんが、そんな人が当たり前に生きられる世の中が来ると思う。
家柄や血筋じゃない、ただお互いを思える人々が、自分の力で世の中を動かせる日が来るのさ。
…たぶん、ものすごく長い時間の後だろうね。
でもその長い時間の中で、私がいるのは一瞬だけど、
流れをほんの少しでも良いものにしたいと思うから…こんなに頑張れるのさ。」
はっと気づいた時には、
3人はぽかーんとした顔をしていた。
突然、難しい話を聞いてしまったからだろう。
――自分の考えをぽろっと言ってしまったな…。
今日は雷蔵の考え癖に引き込まれすぎだ…。
乱「なんだか」
きり「よく」
しん「わかんな~い」
頭をぐるぐる混乱させている3人を見て、
ははっと声をあげて、三郎はおかしそうに笑った。
そして少しかがみ、小さな3人と目線を同じにして、
こう続けた
三郎「少し難しかったかな?
簡単に言うとね、人の嫌がることを平気でしたり、わざと傷つけて自分の方が偉いなんて勘違いしている人間は
本当の意味で偉くなれないということさ。
…本当に偉いと呼べる人間は、自分を良くしていこうと努力できる
強く優しい人間であるんだよ。」
ねえ、雷蔵?
そう問いかけられ、顔をあげた雷蔵は、
優しく、
明るい、
おおらかな笑顔で
大きく頷いた。
*END*
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雷蔵 (スタンドというよりむしろ)三郎
どこにいても召喚できる。
『不破雷蔵あるところ!鉢屋三郎ありさ!!』ですっ飛んでくる。
…が、たいていそばに引っ付いているので召喚する必要がない。
三郎 レッド・フォックス
人の影を踏むことによって、影を取り、その人に成りすますことができる。
三郎と違って、身長・体重・体系も変化する。
竹谷 なし
強いて言うなら、タケメン・スマイル