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《以下の文章は、成長金吾と喜三太の妄想文です。 内容はひたすら妄想ですが、金吾と喜三太の実家設定捏造などがあります。オリキャラ満載です。
中二病的発言は、華麗にスルーしてください。お願いです。
もちろんご本家様とは何ら関係ないばかりか縁もゆかりもございません。そして時代考証など完全に無視しております。訴えないで☆》
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師であり大叔父でもある慈海との対面を終え、帰途につく。
寺門まで見送るため、兄が前を歩いている。
黒染めの衣を着た兄の背中を見つめ、ぼんやりと自分たち兄弟のことを振り返る。
――『兄上』か…。
兄とはいえ、自分と年は変わらない。
同じ時期に正室と側室が身ごもり、生まれ月は同じになるはずだったが、
兄は早産で、自分よりひと月近く早く生まれてきた。
早産で体が小さすぎること、兄弟の順序が危うくなることを恐れた側室の父親が、
生まれてすぐに寺に入れることを提案したと聞く。
子供のうちは分からなかったが、今になって考えてみれば、側室の父親の判断は間違ってはいないだろう。
兄の出来がよかろうと悪かろうと、最初の男子となれば当主にと担ぎ上げる馬鹿が必ず出てくる。
それでなくとも一徹者の多い皆本家。不安の芽は摘んでおこうとする忠義者が出てくるとも限らない。
お家騒動が起これば、子供の命も母親の命も危うい。
そうなる前に、「子供は生まれながらに御仏の弟子にする」と公の場で宣言したそうだ。
その熟慮と忍耐は推し量るに余りあるものがある。
そのせいか、
金吾にとっては、仕方のない事とはいえ、申し訳なさから遠慮することも気を遣うこともある兄である。
また兄も、その遠慮を申し訳なく思っているようだ。
『大人になるにつれ、お互いに遠慮の溝が広がっているような気がする…。』
兄はそんな弟の様子には気づいておらず、境内の木々や花々について説明している。
「あれが寺自慢の竹林。見事なものだろう?
春には何本かタケノコが取れてな、今年は早めに取ったから身がやわらかくてうまかった。
次の春には金吾にもふるまってやろう。山の雪が消えかかるころにおいでなされ。
その時には境内の梅も見ごろじゃ。
寺から城まで続く松林も見事なものだから、帰る道々眺めていくといい…。」
「…はい。」
金吾を楽しませるようとするように話す兄とは反対に、金吾はまだ上の空だった。
師がもうすぐ亡くなるのではという不安感がぬぐえない。
――人はいつか亡くなる
お師匠様も、家臣のじいたちも、父も…
生き物には常に死が付きまとっている。
これを静かにつきつけられてから、なんとも仕様のない不安と焦りが胸につもり、息苦しい。
生気のない返事を不審に思ったのか、前を歩いていた兄が振り返る。
「どうした金吾」
「…兄上、お師匠様はいつまでいてくださるんでしょうか…。」
――しまった!!
ぽろっと口から不安が出てしまった。
なんと気弱な発言をしてしまったのだろう。
覚悟を決めた兄には情けなく見えたのではないか…。
顔をあげると…
少しさびしそうに眼を細めて笑う兄の顔があった。
「金吾。それは、神仏の心しだいじゃ。
誰にも分からぬ。
我らが『いついつまでお師匠様をそばにおいてくだされ』と頼んでもどうにもならん。
別れは明日来るか、三年先か…。
――だが、確実に我らは自分の足で立って歩かねばならん。
その時が来ているのじゃ。
心しておけ。」
不意に下から夏の風が吹き上げた。
それと共に袖を翻し、兄が石段を下りていく。
空はいよいよ日差しを増し、
トンビが輪を描いて鳴いている。
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